負担付贈与とはどのようなものなのか、またどのくらい税金がかかるのか、知りたい方も多いのではないでしょうか?
負担付贈与とは、受け取る側にとってメリットとデメリットを同時に含んだ贈与であるといえます。
そんな負担付贈与にも、贈与税が課せられており、通常の贈与税の算出よりも複雑な計算が必要となります。
負担付贈与を行った後のトラブルを避けるためにも、受け取る人はもちろん、事前に把握しておくべき情報であるといえるでしょう。
相続対策として、負担付贈与を考えている人も、そこにかかるコストを理解して、検討しなければいけないことは、いうまでもありません。
今回は負担付贈与とはどのようなものなのか、どのくらい税金がかかるのか、実際に負担付贈与を行う際の注意点も合わせてお伝えします。
是非とも参考にしてください。
1.負担付贈与とは
負担付贈与とは、何かしらの負担を負ってもらうことを条件に、財産を贈与することをいいます。
例えば、贈与をする人が相手に1,000万円の銀行借入を負担してもらうことを条件として、時価2,000万円の土地を贈与することも、負担付贈与となります。
また、老後の面倒をみてもらえるよう、「毎月生活費○○円を負担すること」などの条件をつけて贈与を行うことも、負担付贈与に含まれます。
この条件の効力は、贈与者が亡くなった後でも持続します。
そのため、負担付贈与の中には、生前に世話をしてもらうかわりに、亡くなったら財産を贈与することを条件とするなど、亡くなった後で贈与を行うケースも少なくありません。
このような贈与は「負担付死因贈与契約」と呼ばれます。
2.負担付贈与の贈与税の計算方法
負担付贈与の場合、贈与される資産の取引価格から、負債となる価値を差し引いた金額(負担が労働である場合には、その労働の対価が差し引かれたもの)で課税が行われます。
その計算はどのように行えばいいのでしょうか。
国税庁ウェブサイトにも掲載されている、具体的な例を紹介しましょう。
【計算例】
父親から銀行借入金1,000万円を負担することを条件に、時価1,500万円の土地の贈与を受けたとします。
その場合、贈与による取引価格は1,500万円となり、負担額は1,000万円となります。
取引価格から負担額を控除した金額が、課税対象となります。
1,500万円(取引価格)-1,000万円(負担額)=500万円
となり、この500万円に対して贈与税が課せられます。
この500万円から基礎控除額の110万円を引くと、課税の対象金額は390万円となります。
今回の贈与が特例贈与に該当すると仮定し、400万円以下の対象金額に適用される税率15%、控除額10万円を差し引きます。
390万円(対象金額)×15%(税率)-10万円(控除額)=48万5,000円
この計算により、贈与税の税額は48万5,000円となります。
3.負担付贈与を行う際の注意点
3-1.不動産にかかる税金は時価をもとに算出される
資産として不動産の贈与が行われた場合は、評価額という価格によって税額の算出が行われます。
しかし負担付贈与の場合は、通常で取引される場合と同じ時価での算出になります。
また、時価は評価額よりも高い金額になる場合が多いということも覚えておきましょう。
3-2.契約書を作成しておく
負担付贈与は、贈与を行う人と受ける人の双方に利益と不利益が生じます。
そのため、お互いの認識がくい違い、後になってトラブルが発生したり、望む形での契約が遂行されないなどといった問題が発生する可能性があります。
そのようなリスクを回避するためにも、負担付贈与を行う際には契約書を交わす必要があります。
この負担付贈与契約書を作成する場合は、贈与の対象となる資産と負担の内容を明記することが大切です。
資産の引き渡しを行う期日やそれにかかる費用、負担の支払いなど、実行期日や金額、契約を解除する場合の条件など、なるべく具体的に契約内容を記載しましょう。
特に不動産を贈与する場合は、登記事項証明書の記載を忠実に行うようにしましょう。
契約書の最後には贈与を行う人と受ける人、それぞれの署名と押印をします。
契約書の押印は必ずしも実印でなければいけないわけではありませんが、確実性を高めるためにも、自署と実印による押印をしましょう。
また丁寧な契約書を作成するのはもちろんのこと、契約書には公正証書を使ったり、弁護士や司法書士などの専門家に契約の執行人になってもらうなど、細心の配慮をはらうことも大切です。
4.まとめ
近年では高齢化と核家族化が進んだ影響で、財産を贈与するかわりに身の回りの世話をしてほしい、自分が亡くなった後のペットの世話をしてほしいなど、条件付きの贈与を行うケースも増えてきました。
負担付贈与に関わることになる人も、以前に比べて多くなっているのです。
税額の計算そのものはシンプルですが、不動産の価格を決める基準が違っていたり、契約書には負担についても記載する必要があるなど、この負担付贈与ならではのポイントがあるので注意しましょう。
負担付贈与は贈与を行う人と受ける人とがしっかり話し合った上で、丁寧に手続きを行うことが大切です。
そのための最初の作業として、入念な情報収集を行いましょう。