相続を円滑にすすめるために、相続遺産の内容を明確にしておきたいとお考えではありませんか?
相続による揉め事が生じないようにするための有効な手段として、相続遺産の目録の作成という方法があげられます。
また、目録の作成を通してプラスの財産とマイナスの財産の内容を把握することによって、負債などのマイナスの財産が生じる場合のリスクに備えられるという特長も存在しています。
つまり、スムーズな相続を行うために、目録を作成しておくことは大切であるといえるわけですが、これを有効に活用するためには、作り方や注意点といった情報についてきちんと知っておくことが重要です。
ここでは相続遺産の目録の基礎知識、作成方法やその際の注意点などお伝えします。
1.相続遺産の目録とは
相続遺産の目録とは、被相続人の持っている財産の一覧を確認することができる表のことです。
「財産目録」と呼ばれることもあります。
相続財産の作成は法律などで義務付けられているわけではありません。
しかし、具体的な内容が細かく書かれた目録があることによって、遺された人たちが財産の内容をすぐに把握できるようになります。
そうすることで「相続税を申告する必要があるか」「申告しなければいけない相続税の金額はいくらか」「借金などのマイナスの財産はあるのか」など、知っておかなければいけない事柄をすぐに把握できます。
また、実際の相続では、被相続人が突然亡くなったことによって、財産の内容や場所を正確に把握したり、共有することができず「遺産を第3者に横領される」「遺産の内容について、親族間で『隠れて引き出しているんじゃないの?』などの疑心暗鬼が生じる」といったトラブルが発生する可能性があります。
生前に目録を作成して、財産の内容を明確にしておくと、このようなトラブルを回避できる可能性も高くなります。
2.相続遺産の目録の書き方
相続遺産の目録に決まった書き方はありませんが、財産の内容を正確に伝えるためにも守ってほしいポイントがあります。
ここでは相続遺産の目録を書く上で、覚えておいてほしい情報をお伝えします。
2-1.相続遺産の書式サンプル
目録を書く際の参考として、まずは裁判所からダウンロードできる相続遺産の目録のサンプルをご紹介します。
それぞれ用紙のサンプルと、書き方の例になります。ぜひ、参考にしてください。
【財産目録:サンプル】
●裁判所ウェブサイト
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/shokaizaisanmokuroku.pdf
【財産目録:記入例】
●裁判所ウェイブサイト
http://www.courts.go.jp/fukushima/vcms_lf/202005018.pdf
2-2.目録に書き込める財産と書き込めない財産
目録に書き込める所有物には、遺産分割の対象になる財産として目録に書き込めるものと、書き込めないものの2種類に分かれています。
2-2-1.書き込める財産
書き込める財産の場合は、さらにプラスの財産とマイナスの財産の2種類に分かれます。
プラスの財産の例としては、建物や土地等の「不動産」、「現金」、預貯金や株券・小切手などの「有価証券」、自動車や株券などの「動産」、他にはゴルフなどの会員券や株式なども、被相続人の財産に含まれます。
逆に相続人にとっては負担となるマイナスの財産には、借金や住宅ローンなどの負債に、未払いの家賃や医療費、そして未払いの税金などがあげられます。
こうした財産は遺産分割の対象として、目録に書き込むことができます。
2-2-2.書き込めない財産
これらの財産に対して、受取人の保障されている死亡退職金や生命保険の保険金、遺族年金、損害賠償金、使用借地権などは、相続の財産には含まれず、目録に記載することはできません。
他にも、墓地や墓石・仏具代、香典に弔辞金、葬儀費用など、お葬式やお墓の購入に関する費用も、相続の財産には含まれません。
3.目録を作成する上での注意点
相続財産の目録を作成する場合には、他にも注意しなければいけないポイントがあります。
目録を作成する前に、これらの注意点にも目を通してください。
3-1.財産の内容は、所在を明確にすることが大切
わかりやすい目録を書くためは、第一に「この財産は不動産なのか」「債権なのか」「預貯金なのか」など、それぞれの財産の種類を正確に書き込むことが大切です。
さらに、目録を書く上で大事にするべきポイントは、財産の内容によって異なります。
例えば財産が不動産である場合には、不動産の詳細な所在地や、あれば家屋番号も記載するなど、細かく情報を記載するようにしましょう。
預貯金の場合は、銀行の名前だけではなく、支店名や口座番号、預金種目など、具体的な記載が必要です。
証券の場合は、証券会社から送られてくる残高報告書も一緒にまとめておくと、内容が把握しやすくなります。
会員権や株式でも、具体的に情報を記載しましょう。
ゴルフの会員券ならゴルフ場の名前、株であれば銘柄など、内容を正確に書き込むことが大切です。
3-2.財産の管理を第三者に任せる場合には?
高齢であったり、体の調子が悪くなってくると、自分で財産の管理をすることができず、第三者に任せないといけなくなる可能性もあります。
現在は財産管理委任契約や任意後見人制度を利用することで、第三者に財産管理を任せることができるようになっています。
弁護士や司法書士、行政書士といった専門家に頼むのがおすすめですが、近年では管理している財産の使い込みが発生するケースもまれにあるため、管理する相手は慎重に選ぶ必要があります。
人柄をしっかりと見極めることも大切ですが、他にも「チェック体制がしっかりしているかどうか」などのポイントにも着目して、安心できる第三者を選びましょう。
3-3.弁護士に依頼するメリットとは
専門家である弁護士に依頼をすると、財産の内容について正確に記載してくれる上に、事前に法定相続分が把握できるというメリットもあります。
わかりやすい目録を作成し、スムーズに相続を進めてほしいと考えるのであれば、弁護士への依頼を検討するのもおすすめです。
4.まとめ
財産の内容について整理し、目録にまとめる作業は簡単なことではありません。
しかし財産の内容を明確にすることは、相続を順調に進めるためには欠かせない作業です。
遺された人たちに円滑な相続を行ってもらうためにも、手を抜くことなく行うようにしましょう。