相続放棄の手続きをしたいけど、どのような手続きをとればいいのか分からずに困ってはいませんか?
相続の際には負の財産まで引き継がなければいけないケースがあり、相続人にとって思わぬ負担を課せられてしまうことも少なくありません。
そういったリスクを回避するための方法の1つとして、相続の権利を放棄する相続放棄という手段が存在しています。
しかし、相続を放棄するためにはどのような手続きをとればいいのか?何が必要なのか?など、気になる点やよくわからないことが数多くあるのではないでしょうか。
このような疑問や不明点を1つでも多く解消することができるよう、今回は相続放棄の手続きに関する基本的な情報をお伝えします。
1.相続放棄とは
遺産の相続と聞くと、多くの人はまず貯金や不動産など、被相続人が所有していた財産を引き継ぐといったイメージを思い浮かべるのではないでしょうか。
ですが、相続に含まれる財産には、上記のようないわゆる正の財産だけではなく、借金や未払い金といった負の財産と呼ばれるものも含まれています。
相続の際には、正の財産よりも負の財産の価格が高いために、思わぬ負担を背負ってしまうケースも少なくありません。
こうした負担が相続人の生活を圧迫しないために、正の財産と一緒に相続の権利を放棄できる制度が設けられています。
この制度のことを相続放棄と呼びます。
2.相続放棄の手続き方法
相続放棄を行うためには、家庭裁判所に対して相続放棄の申述を行う必要があります。
ここでは申述の手続きの流れと、そのために必要となる費用と書類について説明します。
2-1.相続放棄の手続きの流れ
相続放棄の申述を希望する場合には、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ郵送または持ち込んで提出する必要があります。
これらの書類を受理した家庭裁判所は、記載されている必要事項の内容から審理を行い、申述を受理するかどうかを決定します。
記載事項に関して気になる点や明確ではない点があった際には、追加書類の提出が求められたり、家庭裁判所への呼び出しがあり、そこで審問が行なわれる場合があります。
2-2.相続放棄に必要な費用と書類
相続放棄の申述を行う場合には、どのケースにも共通して、相続放棄の申述書と被相続人の住民票の除票か戸籍附表、申述人の戸籍謄本が必要となります。
申述書は全国の家庭裁判所で取得するか、裁判所の公式ウェブサイトからダウンロードすることが可能です。
他には戸籍謄本か除籍謄本も必要となるのですが、同封しなければいけない戸籍謄本の内容は、申述を行う人と被相続人の関係によって変わってきます。
●被相続人の配偶者やその子どもの場合
申述を行う人が被相続人の配偶者やその子どもの場合には、被相続人の死亡時の戸籍謄本が必要となります。
●被相続人の孫やひ孫(代襲相続人)の場合
申述を行う人が被相続人の孫やひ孫といった代襲相続人の場合には、被相続人の死亡時の戸籍謄本に加えて、被代襲者(申述を行う人の父親など)の死亡の記載がある戸籍謄本も一緒に送付しなければいけません。
●被相続人の父母か祖父母の場合
申述を行う人が被相続人の父母か祖父母の場合には、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本と、申述人の現在の戸籍謄本が必要になります。
また、被相続人と申述人の間に亡くなっている人がいる場合(例えば、申述人が被相続人の祖父母で、申述人の子供が亡くなっている場合など)には、間に亡くなっている人の死亡の記載が載っている戸籍謄本も必要です。
●被相続人の兄弟、姉妹の場合
申述を行う人が被相続人の兄弟か姉妹の場合にも、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本と、申述人の現在の戸籍謄本の提出が求められます。
さらに被相続人の父母か祖父母で亡くなっている方がいる場合には、亡くなった方の死亡の記載がある戸籍謄本も提出しなければいけません。
また、書類を家庭裁判所の窓口に直接提出する場合には、認印と運転免許証やパスポートといった身分証が必要となります。
申述にかかる費用としては、申述人1人につき800円分の収入印紙の代金と、連絡用の郵便切手代がかかります。
郵便切手の代金は裁判所によって違うため、申述を行う家庭裁判所に直接確認する必要があります。
3.相続放棄を行う際の注意点
相続放棄の申述を行う際には、事前に覚えておくべきポイントがいくつか存在しています。こうしたポイントがあることを意識した上で、申述を行ってください。
3-1.相続放棄の手続きは3ヶ月以内に
相続放棄を行うためには、相続が開始されたと知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述を行わなければいけません。
ただし、どうしても3ヶ月以内に申述ができない場合には、家庭裁判所に申述期間の延長の申立てを行うと、申述期間がさらに3ヶ月延長できる場合もあります。
3-2.相続放棄を行うと、負の財産は次の相続人に
相続放棄が認められた場合には、負の財産も含めた被相続人の財産の権利は、次の順位の相続人に移ることになります。
たとえば、亡くなった父親の財産の権利を家族全員で放棄した場合、その権利は父親の両親に移ることになります。
この両親も既に亡くなっていた場合には、さらに父親の兄弟に移ることになります。
身近な人に負債を支払う義務を負わせてしまう可能性があるので、相続放棄を行う際には事前に連絡をして、その旨を伝えることが大切です。
また権利が移った人も、相続放棄の手続きを行えば、負債を回避することができます。
3‐3.連帯保証人になっていると、相続放棄では負債を回避できない
もしも相続人が、被相続人の負債に関して連帯保証人になっていた場合には、相続放棄を行っても負債の権利を回避することができません。
こうしたリスクを負う可能性もあるので、連帯保証人になる場合には、充分に考慮することが大切です。
3-4.財産が残る場合のみ利用できる限定承認とは
相続される財産の総合的な価値が分からない場合には、相続で得る正の財産の価値が負の財産によって背負う負担を上回る場合にのみ権利を受け継ぐ限定承認という手段が認められています。
限定承認を認めてもらうためには、相続があると知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述を行う必要があります。
また、この申述の手続きは相続人全員で行わなければいけませんので、注意が必要です。
4.まとめ
相続とは、本来、正と負の両方の財産を引き継ぐものです。
結果的に相続によって利益を得るのか、それとも負担を負うことになるのかは、被相続人の財産や負債について理解していない限り、事前に把握することは難しいと言わざるを得ません。
事前から負担についての可能性に備えておくことも、相続へ向けた対策の1つであるといえるでしょう。
そのためにも、相続放棄という制度について知っておくことは非常に大切です。いざという時に困らないように、ここで紹介した手続きの方法や注意点を、ぜひとも覚えておいてください。