この税務調査実績によると、現金、預貯金、有価証券の申告漏れが半分を占めており(平成15年調査実績)相続税の税務調査は、金融資産を中心に調査をされている場合が多いようです。この税務調査の際にポイントになってくるのが、相続財産の名義がどなたになっているかです。
2-7-1. 被相続人名義の財産
財産が被相続人名義のものに関しては、相続財産に該当することは明らかであるため、あまり問題はありません。ただし、相続手続きが終わったら速やかに相続人の名義に変更するようにして、その後の手続きがスムーズに行えるようにしておきましょう。
2-7-2. 他人名義の財産
被相続人の名義でない場合でも、相続財産に含まれる場合もあるのか、迷うところですが国税庁では、名義に関わらず、被相続人の財産は相続税の課税対象となります。と定められています。
相続財産かどうかは、名義によるのではなく、被相続人に帰属していたかによって決まります。したがって、被相続人の配偶者や子供の名義になっていたとしても、実質的に亡くなった方の財産である場合には、相続財産に含まれます。
例えば、被相続人が相続対策のために子供名義で預金をしていたり、株を買っていたとします。ですが実質的にお金を出していたのは被相続人であるため、被相続人に帰属していた財産になります。
これを「名義預金」といいますが、被相続人が後々のことを考えて節税をしていた行為が結果的には相続手続きの際や、申告後に税務調査が入った際などにトラブルになったりする事例が多く見受けられますので、注意が必要です。
また、被相続人の親の名義のままになっているものも含まれる場合があるのでご注意ください。
3. みなし相続財産
「みなし相続財産」とは、相続人が亡くなった日には財産として所有していなかったけれども、被相続人の死亡を原因として相続人がもらえる財産のことをいいます。
相続人が直接相続をしていなくても、間接的に財産を取得したとして、実質的に相続とみなされるのです。したがって、相続財産に含まれます。
では、みなし相続財産が何にあたるかといますと、前述した死亡保険金や死亡退職金、被相続人が死亡する3年以内に相続人にした贈与などです。
被相続人が亡くなった際に、死亡保険金は保険会社からもらうものであり、死亡退職金は被相続人が勤めていた会社からもらうもので、被相続人が生前から持っていた財産ではありません。
ですが、「被相続人の死をきっかけとして取得した財産」と「相続で財産をもらった」とは意味が同じです。ですから、被相続人が生前に持っていなかった財産であったとしても相続で取得した相続財産であるとみなしているのです。
また、被相続人が死亡する3年以内に相続人にした贈与が含まれるのは、被相続人が相続税を免れることを目的として、死亡する直前に財産を贈与することを防止するため規定されています。なお、相続人でない人にした贈与はこちらには含まれません。
まとめ
亡くなった人の財産は、どこからどこまでを入れればいいのだろう…と考え出すとキリがなくなってしまうかもしれません。財産になるのか、ならないのか、一つ一つちゃんとした理由のもとに区別がされています。選別はなかなか骨の折れる作業ではありますが、しっかりと選別をし、速やかに相続手続きを進めていきましょう。
そして、亡くなった人のものではないと認識をしていても、実際は亡くなった人の財産としてみなされてしまうケースもありますので、トラブルに発展しないように生前からコミュニケーションを取り合い、財産を整理・把握しておくことをお勧めします。
著者:相続ハウス 栗田 千晶(相続診断士)