共同相続とはどのようなものなのか、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか?
被相続人が死亡して相続が発生すると、相続人が何人いるのかによって対応の仕方が大きく違ってきます。
相続形態のひとつである共同相続とはどのようなもので、よく耳にする遺産分割協議とはどのような関係性があるのでしょうか?
また共同相続人がいる場合に行う共同相続登記について、申請はどのように行えばよいのでしょうか?
今回はぜひ覚えておきたい共同相続に関する基礎知識を紹介します。
1. 共同相続とは
共同相続とは、複数の相続人が共同で相続をする相続形態のことをいいます。
その相続に関わるすべての相続人を共同相続人と呼びます。
また、基本的に共同相続人は、被保険者の配偶者や子どもなど身内が該当します。
しかし、被相続人が生前に現在の家庭とは別のところで子どもを残していて、なおかつその子どものことを認知していた場合は、その子どもも共同相続人となります。
また、もし被相続人が遺書によって共同相続人となった人以外に財産譲渡をすることを記載していたとしても、その人は受贈者であって共同相続人には該当しません。
共同相続人同意書とは
金融機関は被相続人が死亡した事実を知ると、第三者によってお金が引き出されるのを防ぐためにその人の預金口座を凍結してしまいます。
共同相続人同意書とは、凍結された被相続人の預金口座を解約したり名義変更したりするときに、共同相続人全員が同意した上で提出する書類です。
記入には共同相続人全員の直筆の署名と実印(印鑑証明書付き)が必要になるので、ひとりの相続人だけでは作成できないようになっています。
2. 共同相続と遺産分割
共同相続人がいて、なおかつ各相続人の取得する財産が遺言書によって、具体的に特定されていなかった場合などに行うことになるのが遺産分割協議です。
遺産分割協議とは共同相続人全員が話し合って、相続財産のそれぞれの分け前について決める協議のことです。
この遺産分割協議が終わるまで、被相続人の遺産は共同相続人の共有状態のままとなります。
3. 共同相続登記について
被相続人が残した財産が現金ではなく土地や建物だった場合、遺産分割協議が終わるまでの期間中に、悪意のある第三者によって売買目的で勝手に名義を変更されてしまうおそれがあります。
そのような事態を防止するために、共同相続人全員の同意のもとで行う登記が共同相続登記です。
3-1. 申請方法
共同相続登記の申請先は、相続財産の所在地を管轄する法務局です。
申請時には相続登記申請書のほかに、以下の書類が必要となります。
・所有権移転登記申請書
・被相続人の除籍謄本
・被相続人の相続関係を明らかにする戸籍謄本
・相続人全員の住民票写し
・相続人全員の委任状
・固定資産評価証明書
また、共同相続登記には特に期限の定めはありません。
申請から完了までは数日から2週間程度かかります。
3-2. 共同相続登記はひとりでも申請できる
共同相続登記は共同相続人に該当する人であれば、ほかの共同相続人の了解を得ることなく申請することができます。
ただし、ひとりの相続人が登記できるのは、自己の持ち分となる法定相続分だけであり、持ち分と異なる相続登記申請をしても、法務局の審査で却下されることになります。
3-3. 共同相続登記を変更する方法
相続登記の回数に特に制限はないので、一度登記をしたあとでも変更することが可能です。
遺産分割協議によって土地や建物の持ち分に変更が生じた場合は、上記の必要書類に加えて、遺産分割協議書を提出して、遺産分割登記を行いましょう。
4. 遺産分割前の不動産の扱いについて
遺産分割協議が終わるまで、相続財産としての不動産は共同相続人全員の共有状態となります。
遺産分割前の不動産を賃貸して賃料収入を得ることは、共有物の管理行為に該当するので、共同相続人の持ち分のうち、過半数の賛成がなければ行うことができません。
売却は共有物の処分行為に該当するので、共同相続人全員の同意が必要となります。
また共同相続人のひとりが第三者に勝手に不動産を売却した場合、ほかの共同相続人は自己の持ち分については、移転登記の抹消を請求することで取り戻すことができます。
しかし、勝手に売却した共同相続人の持ち分については有効であるため、その場合不動産は第三者との共有状態になってしまうので注意しましょう。
5.まとめ
相続人がひとりしかいない場合と複数いる場合の相続では、さまざまな点で違いが生じてきます。
まずは、悪意ある第三者に足元をすくわれないよう、迅速に共同相続登記をすることがトラブルを避ける手段の1つになります。
その上で協議を行い、遺産分割を行いましょう。
手続きや集める書類も多岐にわたるので、手間を省き、ミスを防ぐためにも、専門家に依頼することも検討してみてはいかがでしょうか。
円滑にトラブルなく共同相続ができるようにしていきましょう。