包括受贈者には遺留分がありません。
そのため、仮に遺言書にて指定されていた包括受贈者の受取割合が少なく、他の相続人よりも全然少ないから、遺留分減債請求を申し立ててやる!と思ったとしても、遺留分減債請求はできません。
4-3-2.代襲相続
包括受贈者は代襲相続ができません。
遺言書で指定をされ、包括受遺者となっていた人が相続発生前に亡くなってしまった場合、通常の相続人であれば、相続権は子に継承される事となりますが、包括受贈者の場合は、受贈者自身が亡くなってしまったらそこから子へと権利が引き継がれる事はありません。
4-4.包括遺贈の放棄
「3-2-1.債務も相続しなければならない」でも述べたように、包括遺贈を受けた受贈者は、遺贈を受けたプラスの財産と同様にマイナスの財産(債務)も引き継ぐ義務があります。
従って、債務は受け取りたくないという事であれば、通常の相続人と同様に相続放棄の手続きを行わなければなりません。
相続放棄は、相続が起きた事を知った日の翌日から3ヶ月以内に行います。
仮に、相続放棄の期限を過ぎてしまった場合には、受贈者といえども、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐ事になりますので、ご注意ください。
5.注意点
遺言書によって、包括遺贈を指定された場合、遺贈により相続財産を受け取る際には“贈”。つまり、贈与であっても、税金の計算は相続の税率で計算されます。
遺贈で財産を受け取る場合でも、支払うのは、贈与税ではなく相続税になります。
ですが、受遺者が不動産を取得した際に登記時に係る登録免許税は、贈与時の税率が課税されます。
登録免許税とは、贈与や相続によって不動産を取得した者が、自身の名義に権利を移転する際に国に治める税金の事をいいます。税率は下記の通り定められています。
【相続】:固定資産税評価額×0.4%
【贈与】:固定資産税評価額×2%
従って、遺言書によって包括遺贈を受けた受遺者は、相続税評価額で計算された相続税を支払い、登記を行う際には、贈与時の税率で算出された登録免許税を支払うという事になります。
税率等にご注意ください。
6.まとめ
今回は、包括遺贈とは何か?他の遺贈との違い、包括遺贈のメリットやデメリット、そして、相続発生時の包括遺贈と取り扱われ方についてご紹介させていただきました。
包括受遺者は「相続人と同様の権利義務を有すると定められています」と、法律で定められていますが、相続人となるわけではありません。
その違いで、相続人と同じ扱いで良いという場合もあれば、相続人とは扱いが違う場面もあります。
遺言書によって、包括遺贈を受けた方も、これから遺言書を作成しようと考えているけれど理由があって“遺贈”してあげたい人がいる方、遺贈にも記述や時と場合によって扱いが異なってきます。
是非こちらの記事をご参考にしていただけますと幸いです。
著者:相続ハウス 栗田 千晶(相続診断士)
監修:赤坂トラスト総合事務所 市倉 伯緒(司法書士)
税理士法人エスネットワークス