相続が発生して山林を譲渡した際に、山林所得が発生することを知っていましたか?
山林を所有している全ての人が納める可能性があるのが、山林所得という所得の一種なのです。
山林所得とは一体どのような所得であり、どれくらいの税額になるものなのでしょうか?
また山林所得を少しでも減らしたい場合、どのような控除を活用することができるのでしょうか?
山林所得は他の所得とは違った特徴を持っているため、間違った認識をしていると、あとで後悔してしまうことになるかもしれません。
そのようなことにならないよう、今のうちから山林所得の正しい知識を身に付けておきましょう。
1. 山林所得とは
山林所得とは、山林を「伐採して譲渡」または「立木のまま譲渡」することによって生じる所得をいいます。
ただしケースによって例外があり、5年以内に取得した山林を譲渡した場合には「事業所得」もしくは「雑所得」となります。
2. 山林所得の計算方法
2-1.一般方式
山林所得の計算式は以下の通りです。
【計算式】
山林所得=①総収入金額-②必要経費-③森林計画特別控除(条件あり)-④特別控除額(最高50万円)
それぞれの項目について、順番にご説明します
①総収入金額
山林を譲渡した際に得た売上金額のことです。
なお、山林を家事のために自家消費した場合には、その消費したときの時価が総収入金額に算入されます。
②必要経費
必要経費には山林の取得に要した費用のほか、山林の育成費、管理費、伐採費、搬出費、仲介手数料などの譲渡費用が含まれます。
③森林計画特別控除
森林経営計画の認定を受けている森林所有者に限り、販売収入の20%(収入金額が2,000万円を超える部分の控除率は10%)が控除されるという特例です。
詳しくは「山林所得に係る森林計画特別控除」を確認してください。
④特別控除額
すべての人に適用される特別控除で、総収入金額から必要経費・森林計画特別控除を引いた額に対して、最高50万円が控除されます。
2-2.概算経費控除方式
山林所得の必要経費には「概算経費控除」といわれる特例があり、こちらに該当すると計算式が変わります。
概算経費控除とは、長期間、山林を所有していた人に与えられる特例で「伐採または譲渡した年の15年前の12月31日以前」から引き続き所有していた山林を伐採又は譲渡した場合に限り、「収入金額から譲渡費用を差し引いた金額の50%に相当する金額に譲渡費用を加えた金額」を必要経費とすることができます。
概算経費控除方式の計算式は、以下のようになります。
【計算式】
山林所得=総収入金額-必要経費-(総収入金額-必要経費)×50%-森林計画特別控除-特別控除額
3. 税額の計算方法
山林所得は、ほかの所得と合計せずに別々に計算する「分離課税」であり、「分離5分5乗課税方式」と呼ばれる、ほかの所得よりも優遇された算式を使って計算します。
分離5分5乗課税方式とは、税率を掛ける前に所得を一度5分の1にし、税率を掛けたあとで5を掛けるという算式です。
計算式は以下のようになります。
【計算式】
(山林所得×1/5×税率)×5=税額
ただ山林所得に税率を掛ける場合と「分離5分5乗課税方式」では税額が大きく違い、たとえば課税山林所得が600万円だった場合、前者の税額は77万2500円になるのに対し、後者は半額以下の30万円となります。
4. 山林がすべて山林所得になるとは限らない!?
山林を譲渡したからといって必ず山林所得が発生するとは限りません。
どの所得の対象になるかは、譲渡した山林の「保有期間」と「事業的規模かどうか」によって変わります。
事業的規模とは「業務を大規模に行い、少なくともそれで生計が立てられる程度の規模」のことをいい、だいたい50ヘクタール以上の山林を保有していると該当するといわれています。
4-1. 山林所得になるケース
譲渡した山林を5年以上保有していた場合は、規模の大きさにかかわらず、山林所得として計算されます。
4-2. 事業所得になるケース
保有してから5年以内に山林を譲渡し、その規模が事業的規模と認められた場合は、事業所得として計算されます。
4-3. 雑所得になるケース
保有してから5年以内に山林を譲渡し、その規模が事業的規模ではないと認められた場合は、雑所得として計算されます。
【山林を譲渡した際に生ずる所得の種類】
区分 | 所得の種類 | |
---|---|---|
保有期間5年以内 | 事業的規模 | 事業所得 |
事業的規模以外 | 雑所得 | |
保有期間5年超 | 事業的規模 | 山林所得 |
5.まとめ
山林所得は、山林を所有している人なら誰もが関わる可能性がある所得です。
しかし、所有している山林の価値をしっかりと把握している方は多くないようです。