そんな場合は相続した美術品を特定の団体に寄付することによって、ただ美術品を無償で手放せるだけでなく、現金の寄付と同じように、相続税の非課税特例を受けることができます。
3-1-1. どこに寄付すれば特例が受けられる?
相続税の非課税特例を受けるための美術品の寄付先はどこでもいいというわけではなく、次のいずれかに限られています。
・国または地方公共団体
・公益事業者
※民法34条の規定によって設立された公益法人、その他の公益を目的とする事業を営む法人で、科学・教育の振興等に寄与するところが著しいと認められている法人(理化学研究所、日本育英会、学校法人、社会福祉法人など)
民法第34条
法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
3-1-2. 非課税特例を受けるための手続き方法
相続税の非課税特例を受けるためには、相続税の申告期限(被相続人が亡くなった翌日から10ヵ月以内)までに、相続によって取得した美術品を寄付しなければなりません。
寄付が完了したら相続税の申告書に特例の適用を受ける旨を記載し、美術品を寄付したことを証明する証明書を添付して提出しましょう。
3-1-3. 非課税特例を受けられないケース
もし美術品の寄付をしてから、2年以内に以下のようなケースが発生すると、寄付をした美術品が相続税の課税対象に含まれることになります。
・寄付先が公益事業者でなくなった場合
・寄付先が寄付を受けた財産を公益事業以外に供した場合
美術品を寄付したからといって、まだ相続税が課税される可能性がゼロになったわけではないので注意しましょう。
3-2.不動産の寄付
不動産を寄付する場合の寄付先は自治体となりますが、自治体ごとに寄付制度は設けられているものの、実際に行うのは難しいようです。
たとえ土地や建物であっても、自治体にとって有効活用ができるものでなければ、寄付を受け付けてくれないのです。
必要のない不動産を所有していても、固定資産税や都市計画税がかかってしまうだけなので、相続人からしても困りますよね?
そのため、寄付できなさそうな不動産が相続財産にある場合は、思い切って相続放棄をしてしまうというのもひとつの手です。
4.まとめ
相続財産の寄付はただ社会貢献ができるだけでなく、同時に相続税の節税にもなります。
非課税の特例が受けられるのには、期限がありますので迅速な対応が必要です。
また、不動産の場合は現実的には寄付は難しいということも念頭においておきましょう。
一度、専門家に相談してみることをおすすめします。
寄付をしたご自身もお得になれるように、相続した財産を上手に寄付してみてはいかがでしょうか?