しかし、この規定は被相続人の法定相続人に贈与した場合に適用されます。
孫等の法定相続人以外の方に贈与した場合は3年以内に相続が発生したとしても相続財産に戻され相続税課税対象財産とされることはありません。
4.孫に財産を移すデメリット
4-1. 相続税が2割加算
孫が相続財産を承継した場合、2割加算された相続税が課せられます。
4-2. 他の相続人と揉める可能性が高まる
孫が複数いる場合で、特定の孫への贈与や養子縁組をする等して財産を承継する場合、他の孫やその親を含む親族と関係が悪化する可能性があります。
また、孫を養子にすると、相続人が増える為、遺産分割協議がまとまりにくくなる等のトラブルが発生する可能性もあります。
特定の孫への贈与や養子縁組をする際は、他の相続人のことも十分に配慮され、手続きをされることをお勧めします。
5.注意点
5-1.遺言書が必須
法定相続人でない孫が相続する為には、孫に遺贈する旨の遺言書を遺す必要があります。
遺言書がなければ孫は法定相続人でない為、相続する権利がないからです。
一方、孫が法定相続人となる場合が2つあります。
1つは「2-2.養子縁組」でご紹介したとおり、被相続人と孫が養子縁組をして、孫を法定相続人にすることです。
2つ目は、子(孫の親)の相続が既に発生している場合です。
この場合、孫は代襲相続人として子と同じ相続分を受け継ぎます。
つまり、代襲相続の場合の孫は法定相続人である為、孫へ財産を遺す方法を取らなくとも、子が相続する場合と同じ条件で財産を受け継ぐことができます。
その為、相続税の2割加算等もありません。
しかし、法定相続人が相続することになる為、被相続人の相続発生から3年以内に贈与された財産は相続財産に戻されてしまうので注意して下さい。
5-2.贈与契約書の作成
財産移転後の資産管理がきちんとできないと、贈与の事実に対して疑問が生じ、税務署等からの指摘を受け、後々余計な税金がかかる場合があります。
その為、贈与を受ける度にきちんと贈与契約書を作成されることをお勧めします。
これは、高額なものを贈与する場合だけではなく、非課税枠の範囲で行なう暦年贈与の際にも、贈与契約書を作成することをお勧めします。
万が一、税務署から尋ねられた際に、贈与をしたこと・受けたことの証拠の1つとして提示することが可能となります。
6.まとめ
今回は、お孫さんに賢く財産を遺す方法についてご説明しました。
ご自身のお子様も大切ですが、かわいい孫に財産を遺したいと思われている方も多くいらっしゃると思います。
しかし、通常の場合は何もしなければ孫に財産を承継させることはできません。
孫に財産を遺す方法としては、生前に贈与する方法と相続が発生した時に財産を譲り渡す方法があります。
また、その中でどの方法を使うことが最も良いかどうかは、財産を譲り渡す方やそのご家族の状況によって変わります。
その為、相続の専門家にご相談されることをお勧めします。
著者:山﨑 あすか(相続診断士)
監修:税理士法人エスネットワークス