平成25年の民法の改正によって、嫡出ではない子、つまり非嫡出子と嫡出子の法定相続人が等しくなったことをご存知でしょうか?
法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子どもを嫡出子といい、そうではない男女の間に生まれた子どもは非嫡出子と呼ばれています。
改正前の民法では非嫡出子の法定相続分は嫡出子の法定相続分よりも低い割合でしたが、平成25年9月5日以後の相続については新法によって平等になりました。相続人に非嫡出子である方が含まれる場合は、こうした点を把握し、相続が発生する前に対策をたてることが大切です。今回は、非嫡出子と相続の関係についてお伝えします。
1.嫡出子と非嫡出子の相続分が同等に
1-1.改正前と改正後の違いは?
民法改正前は相続が発生した際、婚姻していない相手との子(以下、非嫡出子)は、婚姻している配偶者との子(以下、嫡出子)の半分しか相続できませんでした。それが、民法改正後は非嫡出子であっても嫡出子と同じだけ相続できるようになりました。
1-2.民法が改正された背景は?
この民法が改正された背景には、被相続人から見て同じ「子」でありながら、嫡出子ですら非嫡出子を不利益に扱うといった差別になり、日本国憲法第14条に記されている「法の下に平等」に違反するのではないか、といった批判がありました。この問題を受けて、最高裁判所が「嫡出子でも非嫡出子でも同じ相続分にする」と判決を出しました。
1-3.非嫡出子の相続人がいる場合の遺産分割の例
もし被相続人の財産として1,200万円あり、相続人に、被相続人の配偶者・嫡出子・非嫡出子の3人がいて、法定相続分通りに遺産分割をする場合、まずは、配偶者と子ども(嫡出子と非嫡出子)で2分の1ずつに分けます。その後、子どもは子ども同士で人数に応じて(今回の例では2人で)分けることになります。
その結果、下記のように遺産分割することになります。
・配偶者(1/2):1,200万円×1/2=600万円
・嫡出子(1/2×1/2人=1/4):1,200万円×1/4=300万円
・非嫡出子(1/2×1/2人=1/4):1,200万円×1/4=300万円
2.非嫡出子がいる場合にとっておくべき対策は?
2-1.遺言書を残す
被相続人が亡くなったあとで、非嫡出子の存在を知ると、被相続人の配偶者や嫡出子として育てられてきた子どもにとっては面白くない話で揉める可能性があると言えます。そのようなトラブルを避けるためには、生前に遺言書を書いてもらい遺産分割方法を決めておくといいでしょう。
遺族に迷惑をかけたくないと心から願っているのであれば、遺言書を書くだけではなく、生きているうちに相続人全員と話し合いの場を用意しておくべきでしょう。
2-2.認知されていないと相続権は認められない
認知とは、婚姻関係にない相手との子どもを自分の子どもだと認める行為です。女性であれば自分が産んだ子は間違いなく自分の子どもですが、男性の場合は自分の子どもだと断定できません。そのため結婚をしていない時に子どもが生まれると、戸籍上その子どもの父親の欄が空欄になります。そして、父親として子どもを認知することで戸籍上の父親欄に名前が記される仕組みになります。
相続権は、非嫡出子が認知されてはじめて得ることのできる権利です。もし「自分が死亡した際、愛人との子どもには相続権を渡したくない」と思うのであれば、認知しなければいいということになります。ただし、愛人側から認知調停などをおこされる可能性もあります。
2-3.弁護士に相談する
既に争いへと発展してしまっている場合などは弁護士に相談するのが得策だと言えます。着手金や成功報酬などかなりの出費があるかと思いますが、それを上回って遺産があるケースなどでは法的手段を使って解決への道筋を照らしてくれます。また、トラブルの原因となっている相手と直接交渉しなくてもよくなるので、精神的にも支えられるでしょう。
3.まとめ
民法の改正により、以前に比べて嫡出子と非嫡出子の相続が公平に行われるようになりました。しかし、こうしたケースでの相続をスムーズに進めるためには、そのための準備を整える必要があることも覚えておきましょう。