銀行預金を利用して相続を行う際に、財産が名義預金だとみなされないように注意をしなければならないことをご存知でしょうか。
家族の名義を借りたものとみなされる預金は「名義預金」と呼ばれており、相続では注意しなければいけないポイントの1つとなっています。
大事な人のための財産を適切に受け渡せるよう、名義預金のリスクや対策の方法を把握しておきましょう。
1.名義預金とは
1-1.名義と本当の所有者が一致しない「名義預金」
通帳に書かれている名義とその預貯金の所有者が異なる場合の預貯金を「名義預金」と言います。たとえば、さほど裕福でもない家庭で育ち、学校卒業後すぐに結婚し、専業主婦になり社会人経験もなく、投資経験もない人の口座に何千万円という預金があれば、ほとんどの人が「そのお金はご主人の稼ぎだ」と認識するでしょう。
名義預金とは、このように収入等から考えて、実質的に真の所有者がいて、親族に名義を借りているだけの預貯金を意味します。
1-2.名義預金の具体例
名義預金という言葉を知らない人は特に意図せずとも名義預金を作ってしまっているケースがあります。心当たりがないか確認しておきましょう。
たとえば、子どもや孫名義の預金です。子どもの結婚資金や教育資金として、親が子ども名義の口座を開設し、毎月積み立て、「まだ大金を渡すには若すぎるから」という理由で親が通帳・キャッシュカード・印鑑を預かっている状態は、まさしく名義預金と言えるでしょう。
子どもが自由に使えないお金は、たとえお年玉であったとしても、名義預金とみなされます。もし、このタイミングで親が死亡し相続が発生すると、子どもは相続税を支払わなければなりません。
また、専業主婦世帯で夫の稼ぎから生活費を節約し、コツコツ貯めたヘソクリも名義預金として扱われますので注意が必要です。
1-3.相続時に名義預金とみなされてしまった場合は?
名義預金の調査が行われるのは概ね相続税のタイミングです。相続税の申告書を作成するときに名義預金と認識していなければ、申告書にその財産を記載しないまま申告してしまうかもしれません。
あとになって税務調査が行われ名義預金とみなされると、その預貯金は相続財産に含まれ、申告漏れという扱いを受けます。もし、そうなれば相続税の追徴はもちろん、延滞税(原則14.6%)や場合によっては重加算税(35%または40%)というペナルティを負うことになります。
2.名義預金と判定される条件とは
2-1.贈与の事実があるかどうか
たとえ被相続人のお金が相続人名義の口座に入金されていたとしても、それがお互いに贈与だと認識していれば、相続財産とはみなされません。そのためには、贈与契約書があるか、贈与税の申告はしているかといった確認をされます。贈与契約書等がない状態で、それを相続開始後に証明するのは非常に難しいといえるでしょう。
2-2.使用している印鑑
被相続人と同じ印鑑を使っている場合には、誰が口座開設をしたのか、誰が入金したのか、誰が口座(通帳等)を管理しているのかといった確認をされる可能性があります。
2-3.保管している印鑑・通帳
相続人と被相続人が同じ場所に住んでいないにも関わらず、通帳や印鑑を被相続人が保管している場合には、「2-2.使用している印鑑」同様の確認をされるほか、被相続人の自宅付近にある支店の金融機関であれば不自然さを疑われるケースもあります。
2-4.利息
最近では利息も少ないため、あまりこのようなケースはないかもしれませんが、入金額が多く利息をたくさん受け取っている場合など、名義人の預金の利息をわざわざ被相続人の口座に移したりすることで名義預金を疑われるケースもあります。
3.名義預金とみなされず相続を行うには?
3-1.贈与を証明する
贈与とは、お金を渡している側も受け取っている側もお互いに「あげます」「もらいます」と承諾している契約を意味します。コソコソと教育資金を貯めたり、ヘソクリを築くのはやめて、しっかりと贈与契約書を作成しておきましょう。また、贈与契約書作成時には、必ずお互い自筆でサインするようにしましょう。
3-2.贈与税を申告する
1月1日~12月31日までの1年間で110万円以上、お金をもらったのであれば、贈与契約書を作成の上、さらに贈与税も申告しておきましょう。お互いが承諾の上で贈与契約をしたという証拠の1つになります。
3-3.口座の管理方法
お金はもちろん通帳や印鑑は、お金を受け取った人が自由に使える状態でないといけません。被相続人がすべて管理していて、相続人がその口座の存在さえ知らないという事態は絶対に避けなければなりません。
4.まとめ
名義を貸しただけの財産は相続税の調査で細かい点まで調べられ、高い可能性で指摘されます。自分たちしか知らないと思いこんでいても、税務調査が行われれば明らかになってしまうことを覚えておきましょう。しかし事前に贈与の手続きを行い、その事実を証明できれば、相続する預金は名義預金とはみなされないはずです。もしもの時にスムーズな相続が行われるように、名義預金には充分に注意して、適切な対策を行いましょう。