主な特殊事例を見ていきましょう。
3-1. 相続人の異動があったとき
相続人の異動とは、相続人の廃除や欠陥、つまり相続人が相続権を失ってしまうことや、相続人が失踪の宣告を受けること、もしくは失踪の宣告が解除されたことなどによって、相続人の人数が変化することなどを言います。
3-2. 遺留分の減殺請求があったとき
遺留分減殺請求により返還額が確定した場合に、申告期限を延長することができます。
遺留分減殺請求とは、「遺留分」という最低限保証されている財産の相続分の事をいいます。遺留分にあたる相続財産すらもらう事が出来なかった場合に、遺留分を請求する事を遺留分減殺請求といいます。
3-3. 遺贈に係る遺言書が見つかったとき
遺贈に係る遺言書が発見されたときや、遺贈の放棄があった場合に、申告を延長することができます。
遺贈とは、遺言書で指定をして法定相続人でない人に財産を遺す事です。
3-4. すでに生まれたとみなされる胎児が生まれたとき
相続人となる胎児がいるときは、その胎児が生まれたときから2ヶ月は延長が認められます。
民法上、胎児についてはすでに生まれたものとして相続権を認めています。したがって、死産又は流産をしない限り、胎児も法定相続人の1人と認められます。
4. 遺産の分割が決まらない場合
4-1. 更正の請求
相続税の申告が必要な場合で遺産分割協議が10ヶ月以内にまとまらない場合には、本来自分のもらえる分の財産をもらったものとして相続税の計算を行い各人が相続税を納める事になります。
財産についての話し合いがつかない場合には、小規模宅地の特例や、配偶者の税額軽減の特例を受ける事ができません。その後、話し合いが終わり遺産分割できた際に「更正の請求」(書類)を提出する事により特例の適用を受けることが出来ます。
この更正の請求は原則として法定の申告期限から5年以内です。
4-2. 調停・審判
遺産分割がまとまらない場合には、家庭裁判所の「調停」による遺産分割を行います。それでもまとまらない場合には「審判」による分割を行います。
5. 相続発生後のスケジュール
相続手続きには、それぞれ決められた期間があります。10ヶ月の申告期限の間にも更に設けられている期限がありますので、留意しておくと良いでしょう。
肉親の突然の死から始まり、葬儀やその他の行事が立て続けにあることから、申告期限までの間は意外にあっという間に過ぎてゆくものです。
まずは何をいつまでに行わなければならないのかを確実に把握しておき、諸々の手続きはできるだけ早めに進める事を心がけましょう。
6. 注意点
6-1. 土地の評価
不動産は相続財産の中でもっとも大きな比重を占めています。土地の評価は税理士によって大きく異なる事もあり様々な特例の適用や評価減の要素に細心の注意を払う必要があります。机上の計算しか行わない税理士の先生ですと、評価額が大きく変わることも有り得ます。税理士を見極める事にもご注意ください。
6-2. 税務調査
税務署では、相続税の申告書が提出されると相続税の申告書に記載された内容が正しいものかどうかの検証を行います。
相続財産の申告漏れとして最も多く指摘されるのが預貯金をはじめとした金融資産ですが、税務署は被相続人や相続人の銀行口座を細かくチェックし、お金の流れを見ます。
「名義預金」や「たんす預金」等にみなされてしまわないようにしっかりと管理をして申告漏れのないよう注意しましょう。
まとめ
相増税の申告期限は10ヶ月以内です。
申告手続きを体験された方の多くの方が口にしますが、10ヶ月という限られた申告期限はあっという間に来てしまうものです。
今回ご紹介させて頂いた相続税の申告期限等について、知っていると知らなかったとでは、相続が発生してからの対応スピードが大分変わってくると思います。
期限内に手続きをスムーズに進めていく為には、
- 被相続人の財産状況の洗い出し・把握
- 誰が相続人になるのか
- 分割方法を決める
上記3点がまとめられていれば、手続きはスムーズに進みます。
出来れば事前に用意ができていると、相続人の方は安心です。
著者:相続ハウス 栗田千晶(相続診断士)
監修:税理士法人エスネットワークス