【タワーマンション節税についての税理士法人エスネットワークスの見解】
本文6-1-1の節税の仕組みを具体的に考えてみましょう。1億円程度の都心のタワーマンション物件なら、評価額は3,000万円程度になると考えられます。相続税法上の特例などを使えば、課税価格はさらに少なくなり1,500万円程度にまで圧縮できます。つまり1億円の現金を相続するのに比べて、相続税額は85%減の1,500万円分で済むわけです。
ですが、相続税の圧縮を目的にタワーマンションを購入するのはおすすめできません。これは言い換えれば、中長期の財産運用の一貫としてタワーマンションを購入するのであれば、特に問題はないということです。タワーマンションの購入には、ストーリーが重要なのです。「購入の目的はなにか」「誰が住むのか」「使用頻度はどれぐらいなのか」、こうした事実関係があいまいなままに相続目的で購入し、被相続人が亡くなり次第売却するようでは、「行き過ぎた節税」とみられてしまう可能性が高いでしょう。
タワーマンションの建設が相次ぐようになったのは最近のことです。「路線価」と「固定資産税評価額」による評価には長年の実績がありますが、タワーマンションに限っては、評価額と市場価格の差がとても大きくなっています。
国税庁の財産評価の通達には「著しく不適当と認められる評価額は国税庁長官の指示を受けて評価する」との例外項目があります。またこれまでにも売買価格などを評価額として課税された例があります。また裁判でも売買価格と評価額の格差が2.2倍だったケースでは、東京高裁が売買価格に基づく課税を正当として「節税」を認めませんでした。
税制は法律が変わらなくても、税制調査会の議論に応じて、国税庁の「方針」という形で現場での運用がたびたび変わってきました。これは裏を返せば、説得力のあるストーリーがあれば、法律に則った適用が受けられるということです。相続する財産がある場合には、自分だけで勝手に判断せず、ぜひ専門家に相談してください。