遺留分の減殺請求は、配達証明をつけた内容証明郵便など、書面で行うことで、あとに言った、言わないの争いを防ぐことができます。
遺留分の減殺請求には請求可能な期間が定められています。
この期間を過ぎると遺留分を侵害されていたとしても、遺留分の減殺請求はできなくなります。
6.相続財産の調査
6-1.相続財産とは
民法では「相続人は相続開始時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と定められています。
この場合の財産とは金銭に見積もることのできる経済的価値のあるすべてのものをいいます。
相続財産には「相続税がかかる財産」「相続税が特別にかかる財産」「相続税がかからない財産」があります。
相続税は原則として、死亡した人の財産を取得した場合にかかります。
6-2.対象と種類
6-2-1.プラスの財産、マイナスの財産
相続財産には「プラスの財産」と「マイナスの財産」があります。
被相続人の残した「権利」にあたるものをプラスの財産といい、土地や建物などの現金や預貯金、不動産、有価証券、車、家財、宝石、骨董品、個人事業用の資産などが該当します。
被相続人の残した「義務」にあたるものはマイナスの財産といい、借入金や未払医療費、未払税金、個人事業用の負債などが該当します。
【判断に迷う財産】
生活雑貨や家具、衣類などの家庭用動産は、5万円以下のものについては一世帯ごとに一括して評価し、それらの家財をまとめて「家財一式 10万円」などと全体で評価します。
【みなし相続財産】
「死亡保険金」や「死亡退職金」といった、相続や遺贈によって取得したとみなされる財産を「みなし相続財産」といいます。
どちらも被相続人の固有の財産ですが、被相続人が死亡して支払いが生じることから、相続財産とみなして相続税が課税されます。
6-3.調査方法
相続財産は被相続人の遺品整理を通じて把握していきます。
形のない遺産については、通帳の送金先や振込先などの履歴、郵便物の差出人、不動産の権利証、保険の証券などを確認しながら調査を進めていきます。
自分たちだけで調査をするのが難しい場合は弁護士や司法書士、税理士などの専門家に調査を依頼することもできます。
相続財産があることがわかったら、遺産分けを円滑に進めるために遺産の評価をしましょう。
6-3-1.相続財産目録
被相続人が元気なうちに自分の財産目録を作成しておくことで、相続人同士の不要なトラブルを避けたり、相続の手間を大幅に減らしたりすることができます。
また財産目録によって現時点の遺産総額を知ることで、相続税を納める必要があるかどうかの判定もしやすくなります。
6-4.評価方法
相続税法第22条(評価の原則)では、相続や贈与などで取得した財産の評価方法を定めています。
詳しく知りたい方は、国税庁HPなどをご参照ください。
参考サイト:http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka/01.htm
6-4-1.土地の評価
土地の評価方式は、「路線価方式」と「倍率方式」があります。
路線価方式で評価する地域を「路線価地域」といい、国税局長が7つの地区を定めています。
間口や奥行などの土地の形状や、自用か貸付用といった土地の利用方法によっても評価方法が変わります。
参考サイト:http://www.rosenka.nta.go.jp/
6-4-2.建物の評価
家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額に法令で定める倍率を掛けて評価します。
貸家など建物の利用区分によって評価方法が定められております。
6-4-3.現金
財布やタンス預金、相続開始直前に引き出してきてまだ手元になる現金などが対象です
6-4-4.有価証券(上場、非上場)の評価
「上場株式」「店頭登録株式」「非上場株式」の種類別に評価方法が定められています。
非上場会社のように取引相場のない株式の評価は、その規模によって大会社、中会社、小会社の別に分かれ、異なる評価方法を使います。
かなり計算が複雑であるため、専門家に相談したほうがよいでしょう。
6-4-5.保険
死亡保険金は被相続人の死亡によって支払われるものであるため、みなし相続財産として相続財産に含まれます。
現行法において、法定相続人の数×500万円までは非課税扱いです。
また、定期金に関する権利や生命保険契約に関する権利の評価については、それぞれ法令で定められています。
6-4-6.退職金
死亡退職金も被相続人の死亡によって支払われるものであるため、みなし相続財産として相続財産に含まれます。
現行法において、法定相続人の数×500万円までは非課税扱いです。
6-4-7.その他(ゴルフ会員権、金・プラチナ、自動車、骨董品)
その他の財産として、「ゴルフ会員権」などの評価方法が法令で定めています。
高額の金、プラチナ、自動車、骨董品などで、法令に特別の定めがないものは、相続開始時の査定額や鑑定価額で評価します。
7.遺言書
遺言書の有無によって、その後の対応方法は大きく変わります。
7-1.遺産分割協議とは
遺産分括協議とは「共同相続人による遺産の共有状態を、各相続人の単独所有にするための協議」です。
協議は相続人の全員参加が原則です。
7-2.財産分割の流れ(遺言→分割協議→調停→審判→裁判)
遺言書がある場合はその内容にしたがって遺産を分割しますが、遺言書がない場合や、遺言書に書かれていない財産がある場合などは、相続人全員で分割協議を行います。
協議がまとまらなければ家庭裁判所の調停による遺産分割を行い、それでも解決しない場合は審判による分割を行います。
さらに審判で納得できない場合には裁判へと発展します。
7-3.遺産分割の種類
遺産分割には「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」があります。