「不動産を売却や担保提供ができない」「第3者への対抗要件が弱いため勝手に処分される」「あとで相続登記しようと思っても、世代がかわり連絡がつかなくなったりして相続登記ができなくなってしまい、数十人で共有のまま放置」などの可能性があります。
あとになるほど調べる手間が増え、司法書士に支払う費用も嵩むため、早めに変更登記しておくほうがよいと思われます。
【期限】
名義変更の義務はないため、期限もありません。
しかし義務がないからといって、名義変更をせずに放置しておくと相続人が次世代に移行してしまいます。
最終的に処分するときなど、名義変更が必要になったときに、相続人を確定して必要書類を集める手間とコストを考えると、相続登記を先送りするメリットはなさそうです。
【費用】
(1)土地の所有権の移転登記
内容 | 課税標準 | 税率 | 軽減税率(措法72) |
---|---|---|---|
相続、法人の合併または共有物の分割 | 不動産の価額 | 1,000分の4 | - |
その他 (贈与・交換・収用・競売等) |
不動産の価額 | 1,000分の20 | - |
(2)建物の登記
内容 | 課税標準 | 税率 | 軽減税率(措法72の2~措法75) |
---|---|---|---|
相続または法人の合併による所有権の移転 | 不動産の価額 | 1,000分の4 | - |
参考サイト:http://www.nta.go.jp/taxanswer/inshi/7191.htm
【必要書類】
申請時には以下の書類の提出が必要となる場合があります。
・被相続人の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
・被相続人の除籍全部事項証明書(除籍謄本)
・相続人全員の戸籍全部(一部)事項証明書(戸籍謄抄本)
▼詳しくは法務省のHPでご確認ください。
参考サイト:http://www.moj.go.jp/content/000123426.pdf
10-1-2.名義預金
名義預金とは、被相続人以外の名義の預金通帳はあるが、実態は被相続人の預金であるものです。
よくある例として、親が子供や孫の名義で預金通帳を作成し、そこに毎年110万円ずつ振り込むというものです。
この場合は単に名義を借りているだけで、実態は被相続人の財産のため、相続財産に含まれることになります。
贈与を成立させるためには、「あげた・もらったを双方で明確にしている」「きちんと贈与調書を交わしている」「もらった側で贈与税の申告をしている」「銀行振込により贈与している」など、贈与の事実があったことを立証できるようにしておく必要があります。
振込先の通帳の印鑑が贈与者のものであったり、通帳を贈与者や親が管理していて子供が存在を知らない場合や自由に使えない場合、贈与者が判断力不足状態や意識不明の状態にあり、贈与の意思が確認できない状態で贈与している場合には贈与とはいえず、名義預金とされます。
10-2.特別受益
特別受益とは、相続時に発生する不公平を是正する制度です。
被相続人から特別の利益を受けていた相続人は、財産額の前渡しを受けていたものとして扱われ、その贈与の価額が相続財産に加算されます。その加算した額をもとに、各人の具体的相続分を計算していきます。
被相続人から、「遺贈」「婚姻、養子縁組のための贈与」「生計の資本としての贈与」を受けた者は特別受益者となります。
遺贈された財産はその目的を問わず、すべて特別受益として持ち戻しの対象になります。
遺産の前渡しといえるかどうかは諸事情を勘案して、個別に判断することになります。
【対象、非対象】
特別受益の持ち戻し対象は、被相続人から相続人に対する生前贈与か遺贈のため、原則として相続人でない者に対する生前贈与や遺贈は対象外になります。
10-2-1.贈与、遺贈
贈与、遺贈は負担付贈与、不動産贈与、生前贈与、直系尊属からの教育資金の一括贈与、直系尊属からの結婚・子育て資金の一括贈与、直系尊属からの住宅取得資金の贈与などがあります。
【負担付贈与】
一定の債務を受贈者に負担させることを条件にした財産の贈与のことで、負担付贈与を受けた場合は「贈与財産の価額」から「負担額を控除」した価額に課税されます。
【教育資金一括贈与】
・教育資金の一括贈与時の非課税
平成31年3月31日までの間に、個人が教育資金に充てるために「信託の受益権の取得」や「預金もしくは貯金として預入」「有価証券の購入」をした場合には、その価額のうち1,500万円までの価額は、贈与税の課税価格に算入されません。
①教育資金管理契約の終了時の課税
特定の事由で教育資金管理契約が終了したときに、教育資金管理契約にかかる非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額がある場合は、その残額が以下に該当する日に当てはまる年の贈与税の課税価格に算入されます。
・受贈者の30歳の誕生日
・教育資金管理契約が終了した日(すべてのケースが当てはまるわけではありません)