遺言能力は、遺言を作成する時点で有している必要があります。
遺言が有効に成立したあとに、遺言をした人が能力を失っても、遺言はその効力を生じます。
成年被後見人であっても、有効に意思表示することが一時的にできるようになったときに、医師2名以上の立ち会いにより遺言することができます。
※成年被後見人
精神上の障害により判断能力を欠くとして、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた人。
4-3.種類
遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
4-3-1.自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、全文を自筆で記載する遺言のことです。
パソコンなどを使用したり、他人に代筆してもらうと、自筆ではないため無効となるのでご注意ください。
遺言をする人が、紙に、遺言の内容の全文、日付、氏名のすべての部分を自分で書き、署名、押印することにより作成する遺言です。
Wordなどの文書作成ソフトやビデオレター、ボイスレコーダー、他の人の代筆によるものは認められません。
【メリット】
費用がかからず、いつでも何度でも手軽に作成ができ、遺言の存在や内容を秘密にできる。
【デメリット】
・民法の形式通りに作成していないために無効とされることが多く、日付を特定していること、字句の訂正や加筆は所定の訂正方法によること、自署押印が必要であることなどが細かく規定されている。
・遺言の存在を秘密にしている場合、遺言をした人の死後、誰も遺言を発見できない恐れがある。
・財産の特定ができない曖昧な内容の場合、相続人の間で解釈に違いが生じて、争いの原因となる場合がある。
・隠ぺいや偽造、紛失の恐れがある。
・自筆の文字を書けない場合は自力で作成できない。
【必要書類】
・遺言を自筆する紙
・作成した遺言書を入れておく封筒
・ペン(改ざん防止のため鉛筆でなくボールペンなどのほうがよいです)
・印鑑(実印でなく認印も可、拇印は避けたほうが無難です)
【書き方】
①全文を直筆で書く
タイトル、本文、作成日付、氏名のすべてを直筆で書く必要があります。
文字や紙の色に指定はありません。
②遺言書とわかりやすく明記する
遺言書であるということがはっきりわかることが大切です。
用紙のサイズ、紙質の指定はありません。
③作成した年月日と氏名を記載し、押印する
作成した年月日、氏名、押印が必要です。
日付は○年○月○日といった形式ではっきりと書きます。
たとえば、○年○月吉日などと書くと作成年月日が特定できず、無効になります。
印鑑は認印より、実印の方がよいでしょう。
④消しゴムで消せないボールペンなどで書く
消しゴムで消せる鉛筆などで書くと、書き直される恐れがあるので、ボールペンやサインペン、万年筆などで書くのがよいでしょう。
⑤財産が特定できるように書く
財産が特定できない場合には、相続人の間で争いが起こる恐れがあります。
財産がはっきりとわかるように書きます。
土地や建物などは、登記事項証明書の記載をそのまま書くのがよいでしょう。
⑥財産を受ける人を表記する
財産を受ける人が特定できない場合も相続人の間で争いが起こる恐れがあります。
遺言者との続き柄や誕生日も表記しておきましょう。
⑦遺言執行者を指定する
遺言執行者は、遺言書に書かれた内容に沿って、相続人の代理人として、相続財産を管理し、名義変更などの各種手続きを行います。
遺言執行者を指定することで手続きがスムーズになります。
⑧遺言書を封筒に入れて封印する
遺言書は封筒に入れて封印するのがよいでしょう。
【検認とは】
検認とは、相続人に対して遺言の存在とその内容を知らせるとともに、遺言書の形状や加除訂正の状態、日付、署名など、遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造や変造を防止するための手続きです。
自筆証書遺言書の保管者、またはこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知ったらすぐに遺言書を家庭裁判所に提出し、その検認を申し立てなければなりません。
検認を受けないで遺言を執行したり、家庭裁判所外で封印のある遺言書を開封したりした人は、5万円以下の過料に処せられます。
また、故意に遺言書を隠していた場合には、相続欠格者として相続権を失います。
4-3-2.公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証役場で公証人に作成してもらう遺言のことです。
遺言をする人が、公証人の面前で遺言の内容を話し、それに基づいて、公証人がその人の真意を正確に文章にまとめ、公正証書遺言として作成する遺言です。
複雑な内容であっても、法律的にきちんとした内容の遺言を作成できるため、方式の不備で無効になる恐れがありません。