【現物分割】
「自宅の土地と建物を妻に、A銀行の預貯金を長女に」というように、遺産をあるがままの形で分割する分割方法です。
【代償分割】
遺産の全部または一部を1人または一部の相続人に取得させるかわりに、他の相続人に代償金として不足分を支払う方法です。
債務を負担する方法による分割ともいいます。
【換価分割】
遺産の一部または全部を売却して、そのお金を分ける方法です。
【共有分割】
個々の遺産を共有する方法です。
分割を先送りにするため、次の代にいくほど分割がしにくくなります。
7-4.遺産分割協議書
遺産分割協議を行った結果を書面に記載したものを「遺産分割協議書」といい、相続税の申告や不動産、預貯金などの名義変更で必要になります。
共同相続人全員が協議書に実印で押印し、相続人全員の印鑑証明を添付します。
【書き方】
相続(遺産分割)による所有権移転登記申請書のなかに不動産の遺産分割協議書の記載例がありますので、参考にしてください。
参考サイト:
http://www.moj.go.jp/MINJI/MINJI79/minji79.html
7-5.遺産分割の期限
遺産分割に期限はないため、実施されなければ共同相続人で共有している状態のままになります。
ただし相続税の納税義務がある場合は、相続開始から10か月後の法定申告期限までに分割されないと、相続税法上の優遇措置を受けることができなくなるため、相続税額が一時的に増えてしまいます。
また、相続税の納税義務がある場合には相続申告を行う必要があります。
7-6.遺産分割協議でまとまらなかった場合
共同相続人の間で協議がまとまらなかった場合、相続人は家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てをすることができます。
7-6-1.遺産分割調停とは
調停官、調停委員が間に入り、話し合いで分割内容を合意する手続きです。
合意した場合に作成される調停証書には、判決と同一の効果があります。
被相続人が亡くなり、その遺産の分割について相続人の間で折り合いがつかない場合には、家庭裁判所の遺産分割の調停または審判の手続きを利用することができます。
調停手続を行うと、遺産分割調停事件として申し立てられます。
この調停は、相続人が他の相続人全員を相手方として申し立てるものです。
調停手続では、当事者双方から事情を聴いたり、必要に応じて資料等を提出してもらったり、遺産の鑑定を行うなどして内容を把握します。
その上で、各当事者が希望している分割方法がどのようなものか、それぞれの意向を聴取し、解決案を提示したり、解決のために必要な助言を行うなどして、合意を目指した話し合いが進められます。
なお、話し合いがまとまらず調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続が開始され、裁判官が遺産に属するものや権利の種類などを考慮し、審判をすることになります。
【申立人】
申立人は「共同相続人」「包括受遺者」「相続分譲受人」です。
相手方のうちの1人の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意の上で定める家庭裁判所に申し立てします。
【期限】
調停で話し合いがまとまらない場合は不成立として終了します。
引き続き審判手続を行った上、審理によって結論が示されることになります。
【申立に必要な費用】
・被相続人1人につき収入印紙1,200円分
・連絡用の郵便切手(各裁判所のウェブサイトの「裁判手続きを利用する方へ」に掲載されていない場合は、申し立てする家庭裁判所に確認してください)
【書類】
申立には以下の書類が必要です。
・申立書1通およびその写しを相手方の人数分
・標準的な申立添付書類
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・被相続人の子(およびその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(およびその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本
・相続人全員の住民票および戸籍附表
・遺産に関する証明書
【手続き】
家庭裁判所の遺産分割手続は、遺産を探し出すことを目的とした手続きではないため、相続人の1人が遺産の一部を隠していると疑っていても、家庭裁判所に調べてもらえるわけではありません。
ほかにも遺産があると考える場合には、原則として、自らその裏付けとなる資料を提出しなければなりません。
【遺産分割調停申立書】
裁判所のHPに書式のダウンロードと記載例が紹介されています。
参考サイト:
http://www.courts.go.jp/saiban/syosiki_kazityoutei/syosiki_01_34/index.html
7-7.寄与分とは
寄与分とは、相続をする際に「特別な寄与」をした相続人がいる場合に、その貢献度に相当する額を上乗せすることを認めて公平性を図るための制度のことです。
【対象と非対象】
寄与分が認められるのは相続人のみに限られ、それ以外の者は被相続人に貢献していたとしても、寄与分を主張することはできません。