相続が発生した際に、相続財産はどのようにして調べるのかご存知でしょうか?
相続の対象になる財産は預金や土地をはじめとして、非常に多岐にわたります。相続では10ヶ月以内にこれらの相続財産の範囲を把握し、遺産分割を行って相続税の申告を行わなければいけません。
相続財産の範囲を把握するには、どのような財産が対象になるのかを理解した上で、調査をすることが大切です。
今回は相続の対象になる財産とならない財産、そして財産の調査方法といった、相続の前に覚えておくと役に立つ情報をお伝えします。
1.相続の対象になる財産
1-1.相続の対象になるプラスの財産
相続税の課税対象となる財産には、「本来の相続財産」と「みなし相続財産」があります。本来の相続財産は、被相続人が持っていて且つお金に換算できる財産を、みなし相続財産は、被相続人は持っていないけれども、その人が亡くなったことで相続人が受け取れる財産を意味します。
本来の相続財産には、次のようなものがあります。
現金・預金 | 現金、小切手、普通預金や定期預金など |
家庭用財産 | 家具、自動車、貴金属、宝石、書画骨董品など |
土地・建物 | 宅地、田畑、山林、家屋、庭園設備など |
土地に関する権利 | 借地権、地上権など |
有価証券 | 株式、債券など |
事務用財産 | 機械設備、商品、備品、売掛金など |
その他 | 著作権、特許権など |
みなし相続財産には、次のようなものがあります。
生命保険金 | 被相続人が契約者(保険料負担者)且つ被保険者で、その保険金の受取人が相続人である場合の死亡保険金 |
死亡退職金 | 被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの |
1-2.相続の対象になるマイナスの財産
相続税を計算するする際、正味の相続財産に税金をかける必要があります。そのためプラスの財産からマイナスの財産を差し引かなければなりません。マイナスの財産として認められるものには「債務控除」と呼ばれるものと「葬儀費用」と呼ばれるものがあります。
マイナスの財産として扱われる債務控除には、借入金・買掛金、未払いの税金、未払いの医療費、未払いの不動産等購入代金などがあります。ただし、被相続人が生前に購入した墓石や仏壇の購入代金の未払い金や遺言執行費用、相続税申告費用などは債務控除に含まれません。
またマイナスの財産として扱われる葬儀費用には、通夜、仮葬儀、本葬儀、埋葬、火葬、納骨等に要した費用およびお寺へのお布施や戒名料などがあります。ただし、香典返しの費用や法要費用(初七日、四十九日等)は葬儀費用に含まれません。
2.相続税の対象にならない財産
相続財産の中には、相続税の対象にならない財産というものが存在します。次のようなものは、相続税の対象となりません。
交通事故等による損害賠償金。
相続や遺贈により受け取った生命保険のうち、「500万円×法定相続人数」の金額。
相続や遺贈により受け取った退職金のうち、「500万円×法定相続人数」の金額。
墓地や墓石、仏壇、仏具など日常礼拝をしているもの。ただし、骨董的価値がある場合や投資対象としてその商品を所有している場合には相続税がかかります。
3.遺産分割の対象にならない財産
受取人の決まっている死亡保険金や死亡退職金、生前贈与が行われた財産などは受取人固有の財産となり、原則、遺産分割の対象にはなりません。ただし、他の相続人と比べ著しく不公平がある場合には、遺産分割において考慮される可能性(参照:裁判所)があります。なお、受取人が相続人ではない第三者である生命保険については、特別受益とならないため遺産分割において考慮されることはありません。
4.相続財産の調査方法
4-1.不動産
まずは家の中で権利書または登記識別情報通知、そして固定資産税の納税通知書を探し、不動産の場所を特定します。その不動産のある役場へ行き、名寄帳と持分に関係なく所有する全ての固定資産評価証明書を請求しましょう。次に法務局で登記簿謄本(登記事項証明書)を取得しましょう。この手順を踏むことで、その不動産がたとえ誰かとの共有になっていたとしても、その持分まで把握できます。
4-2.預貯金や金融商品
口座が一箇所にまとまっていれば話は早いですが、そうでない場合、家の中から見つけ出す必要があります。財布はもちろん引き出しの中など隠し場所になりそうなところを徹底的に調べます。また金融機関名が書かれたタオルやカレンダー、水道光熱費やクレジットカードの引落し口座などをヒントに探し当てましょう。もしかするとブラウザで各金融機関のサイトへアクセスすると自動ログイン設定がされているかもしれません。
目星がつけば事前に各金融機関へ連絡し必要書類の確認をしましょう。銀行なら残高証明(名寄せ)と取引明細を、証券会社なら取引残高報告書、取引報告書(運用報告書)を請求しましょう。
4-3.債務の確認
個人からの借入れや連帯保証人は預貯金同様、家の中を捜索し、関連資料を探すしかありません。しかし、金融機関から借り入れている場合は、一般社団法人銀行協会、株式会社シー・アイ・シー、株式会社日本信用情報機構などに問い合わせると借入れ状況等の開示が可能です。
5.まとめ
このように、財産の種類によって異なる調査が必要になります。相続範囲を把握するためには、それぞれの調査を丁寧に行うことが大切です。限られた時間の中で調査を行うことは難しいので、弁護士などの専門家のサポートを受けて、確実に作業を行うことをおすすめします。
相続をスムーズに進めるためには欠かせない作業の1つなので、なるべく早い段階で相続財産の範囲や調査方法を理解しておきましょう。