遺言のなかで「公正証書遺言」の利用者が年々増加しています。
自筆ではなく、あえて公正証書遺言を作成するメリットとはなんでしょうか?なぜ利用者数が増えているのでしょうか?また、かかる費用や必要な手続きはどのようなものでしょうか?
まずは、遺言作成から相続時にわたっての手続きと必要書類をおさえましょう。
1.公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、生前のうちに被相続人が公証役場に赴き、公証人に依頼して口述筆記により作成される形式の遺言です。
原本が役場に保存され、複写を被相続人が持ち帰る仕組みです。内容が明確になるメリットがあります。
最近は第三者による変更ができないよう、利用件数の増えている遺言形式でもあります。
公正証書遺言の件数推移をみてみましょう。
出典:日本公証人連合会
http://www.koshonin.gr.jp/pdf/kousyou3.pdf#search=’%E9%81%BA%E8%A8%80%E4%BD%9C%E6%88%90%E6%95%B0′
1-1.自筆証書遺言との違い
自筆証書遺言とは、費用をかけず1人で作成することができる遺言形式です。
作成したこと自体を秘密にすることもできますが、遺言を発見した人が必ず家庭裁判所にて「検認」という手続きをしなければなりません。
家庭裁判所にて相続人の立ち会いのもと、開封しなければならないとする決まりがあります。
違反すると、原則として5万円以下の過料が科せられます。
自筆証書遺言は書き換えや改ざんも容易のため、特に封をしてあった場合は、衝動的に開けないように注意が必要です。
家庭裁判所は、遺言の方式に関するすべての事実を調べ、遺言の外部的状態を調査したうえで、「検認調書」という書類を作成します。
1-2.公正証書遺言を作成するメリット
公正証書遺言を作成するメリットは、「遺言が正しいという証明」と「検認手続き」という自筆証書遺言の煩雑さを省略できるところにあります。
特に相続時は最初の手続きである「相続放棄」まで3カ月という短い時間しかない一方で、家庭裁判所の検認手続きは約1カ月を必要とします。
自筆証書遺言の発見が少しでも遅れた際は、タイトなスケジュールとなるため注意が必要です。
ましてや相続時は亡くなった人とのお別れや葬儀の準備など、相続手続き「のみ」に集中できるものではありません。
公正証書遺言は費用も時間もかかりますが、利用者数が伸びているのはこのあたりの背景もあるでしょう。
2.公正証書遺言の必要書類
公正証書遺言の作成には、どのような書類が必要なのでしょうか。
2-1.必要書類
○遺言者本人の印鑑登録証明書(3カ月以内)
○相続人に財産を相続させる場合は、証明する戸籍謄本(3カ月以内)
○相続人以外に遺贈(いぞう)する場合は、遺贈先の方の住民票(3カ月以内)
○不動産を相続する場合は、土地建物の登記簿謄本、固定資産評価証明書
○そのほか資産状況、相続先を示すメモ
※「遺言者本人の本人確認書類」を求められる場合もあります。
また、公正証書遺言を作成する際は「証人2名」に同行して貰う必要があります。
この証人は未成年者、および相続財産の受取人となる人(推定相続人)とその配偶者、直系血族はなれません。
証人を準備できない場合は、公証役場で指名した証人が同席します。
2-2.注意点
公正証書遺言は、自筆証書遺言に比べて、多額の費用がかかります。
作成費用は、遺言の目的たる財産の価額によって手数料が変わります。
<公正証書作成費用>
目的財産の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 17,000円 |
1,000万円を超え3,000万円以下 | 23,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 29,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 43,000円 |
1億円を超え3億円以下 | 43,000円+5,000円ごとに13,000円 |
3億円を超え5億円以下 | 95,000円+5,000円ごとに11,000円 |
10億円を超える場合 | 249,000円+5,000円ごとに8,000円 |
公証役場ホームページhttp://www.koshonin.gr.jp/hi.htmlより筆者作成