家族が亡くなった後に遺品整理をしていたら、タンスや机の引き出しの中から遺言書を発見!こんなとき、あなたならどうしますか?
いくら動揺していても、慌てて中身を確認してはいけません。
なぜなら、もし中身が公正証書遺言でなかった場合、民法1004条に「遺言書の検認が必要であること」が規定されており、勝手に開封してはいけないとされているからです。
では検認とはどのようなもので、なぜ必要とされているのでしょうか?
また検認の手続きはどのように行わなければならないのでしょうか?
そこで今回は、いざというときに慌てずに済むように、遺言書の検認について、検認が必要となる遺言の種類や手続き方法など、遺言書を発見した際に知っておきたい基礎知識をご紹介します。
1.遺言書の検認とは
遺言書の検認とは、遺言書を家庭裁判所へ提出し、立会人のもとで開封し、内容を確認する作業のことです。
遺言書の存在と内容を明確にし、偽造されることを防ぐためにも必要な手続きと定められています。
遺言書には、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の大きく分けて3つの種類があり、すべての遺言書に対して、検認が必ず必要となるわけではなく、遺言書の種類によって、必要なものとそうでないものとがあります。
2.検認が必要・不必要となる遺言書の種類
2-1.検認が不要となる遺言書
●公正証書遺言
公正証書遺言とは、2名の証人となる人と共に公証役場へ出向き、本人が口述した内容を公証人が記述して作成する遺言書です。
そのため、遺言書を書く時点で証人が2名以上いて、作成後も公正証書として扱われるため、開封時の検認の手続きをする必要はありません。
2-2.検認が必要となる遺言書
●自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、文面も氏名や日付もすべて自分で書いた遺言書です。
この場合は証人となる人が一切関わっていないため、開封前に遺言書の内容を相続人全員に明確にして、偽造や変造を防止するために、家庭裁判所で検認の手続きを取らなければなりません。
●秘密証書遺言
秘密証書遺言書とは、遺言の内容を秘密にしたまま、作成した遺言書の存在だけを公証役場に証明してもらう遺言書です。
公証役場が関わっていても、内容に関しては本当に本人の意思で書かれたものかという確認は取れていません。
そのため、こちらも自筆証書遺言と同様に、家庭裁判所で遺言書の検認の手続きを受けなければなりません。
3.遺言書をうっかり開けてしまったらどうなる?
もし、遺言書を発見しても慌てて開封しないことが大事です。
公正証書遺言書であれば開けてしまってもかまいませんが、秘密証書遺言や自筆証書遺言との見分けがつかないのであれば、うかつに開けてしまうと面倒なことになります。
検認が済んでいない公正証書遺言以外の遺言書を開封してしまった場合や家庭裁判所以外の場所で開封してしまった場合には、民法1005条で5万円以下の過料が課せられるとされています。
しかし、うっかり開けて中身を見てしまったことによって遺言書の効力がなくなってしまうということではなく、遺言書としての体裁が合っているか、内容は本人の意思で書かれたものに間違いないかが確認されれば効力は発生します。
もし、開けてしまっても検認の手続きは行うようにしましょう。
相続人間で揉めることが必死の場合であれば、それらしきものを見つけてもあけないで手続きをすることをお勧めします。
4.検認の申し立てから検認期日までの流れ
4-1.申立先と申立人
遺言書の検認は、亡くなった人が最後に住んでいた場所を管轄する家庭裁判所に行います。
申し立てができるのは、遺言書を保管している人、あるいは遺言書を発見した人です。
つまり、親族や相続人にあたる人しか申し立てできないわけではありません。
4-2.必要な書類とかかる費用
遺言申し立ての際には、検認申立書と、亡くなった人が生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍、相続人全員の戸籍謄本が必要です。
かかる費用は、遺言書1通あたり収入印紙800円分と後で相続人に対して連絡するために用いる郵便切手(郵便切手代ではなく郵便切手で提出)です。
また戸籍謄本など、必要な書類を集める際の取得費用や、相続の手続きの際に必要となる検認証明書の発行費用として、数百円~かかります。
4-3.手続きの流れ
これらの書類をすべてそろえて家庭裁判所に提出すると、申し立ての手続きが完了します。
申し立てが受理されると、家庭裁判所からすべての相続人宛てに検認期日の通知が送付されます。
何らかの理由で検認期日に立ち合えない場合は、欠席することも代理人に出席させることもできます。
検認期日には、遺言書を保管している人が家庭裁判所に遺言書を持参し、相続人の立ち合いの下で遺言書の開封と中身の確認を行います。
その内容に基づいて検認調書が作成されるため、立ち合いに参加できなかった人も、後日郵送で内容を知ることは可能です。
5.まとめ
もし、あるとは思っていなかった遺言書を発見したとしても、遺言書の種類によっては、慌てて中身の確認をする前に、検認の手続きを行うようにしましょう。
その際に、検認が必要な遺言書とそうでないものと、判断が難しい場合は専門家へ相談することをおすすめします。
開封しても無効になるわけでなければ、5万円程度の罰金で済むなら、中身を確認したいという人もいるかもしれません。
しかし、中には封筒に遺言書と書かれているだけで、中身が白紙の状態だったり、入れ忘れのため空っぽという場合も想定できます。
それを開けてしまったために、5万円の罰金を科せられたのでは割りが合いませんよね。
また、中身が書かれていたとしても、開封してしまったことで、改ざんを疑われてしまい、トラブルへ発展することもあります。
要らぬ争い事を避け、円滑な相続にするためにも、見つけた遺言書は開封せず、速やかに検認の手続きを行うようにしましょう。