登記をしないで放置している期間が長ければ長いほど、これらの状況が起こる可能性は高くなりますので、相続登記ができなくなる可能性も高くなっていくのです。
2-5.対象不動産の売却や担保提供等ができない
対象不動産を売却したり、お金を借りるために不動産を担保に入れたりするような場合は、相続登記を完了していないと行うことができません。
ただし、名義人が生前に売却契約を行っていて、登記する前に亡くなった場合は、相続登記は必要ありません。
それはあくまでも契約者は亡くなった名義人であり、相続人はその登記を代わりに申請する人、とされるためです。
この場合は、相続登記をせずに名義人から買い手に直接登記することができます。
2-6.差し押さえされる可能性
相続人の一人に借金があって、返済が滞っている際に、その債権者が判決などに基づいて相続財産を差し押さえる場合があります。
この場合、債権者は、相続人の法定相続分を差し押さえることができるので、勝手に法定相続分の相続登記をしてから、債務者(共同相続人の1人)の持分について差押え登記をすることができます。
つまり、誰も知らない第三者が相続人として所有権を得ることになり、もし売られてしまった場合、その不動産は買い手との共有名義となってしまうのです。
2-7.不動産賠償が受けられない
不動産賠償とは、事故や契約違反、不法行為などにより不動産が受けた損害を、金銭などで補てんすることをいいます。
不動産賠償は本来、実際に住んでいる人に対して行うものですが、対象者全てのそれを特定することは難しい場合があるため、原則として登記上の名義人に対して行われます。
ですので、例えば自分が住んでいる家が亡くなった父名義のままになっていた場合、不動産賠償は原則として受けられないのです。
最近ですと、東日本大震災で原発事故により自宅に住めなくなった人に対して東京電力が不動産賠償を行おうとしましたが、相続登記されていないがために賠償が行えない、というケースも報告されています。
3.相続登記の方法
では、実際に相続登記をするにはどうしたら良いのでしょうか。
まず、相続登記の申請をする場所は法務局です。
法務局であればどこの法務局へ登記を申請してもいいわけではなく、 不動産の所在地によって法務局の管轄も決まっていますので、管轄内の法務局にて申請をしましょう。
どこの法務局に行けばいいのかは、下記の法務局のHPで調べることができます。
「法務局 管轄のご案内」
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html#anchor2
また、最近はオンラインによる登記申請もできるようになりましたので、興味がある方は参考にしてみてください。
「法務局 不動産登記のオンライン申請について」
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji72.html
登記手続きは自分でもできますが、書類に不備があった場合や書類が揃っていないと何度も法務局とのやりとりを行わなければならないので、すっきり済ませたい場合や早く終わらせたい場合は専門家に依頼するっことも検討しましょう。
3-1.必要書類
3-2.費用
自分で登記手続きをする場合にかかるのは主に登録免許税(不動産の登記にかかる税金)で、金額は「固定資産税評価額×0.4%」となっています。
これは生前贈与や売買による費用より安く設定されています。
ただし、固定資産税評価額は相続登記を申請する年度のものを基準とします。被相続人が亡くなった年度のものではないので注意が必要です。
例えば、標準的な戸建て住宅の土地の評価額が3,000万円、建物の評価額が1,000万円であれば、次のような金額になります。
土地:固定資産税評価額 3,000万円×0.4%=12万円
建物:固定資産税評価額 1,000万円×0.4%=4万円
合計:16万円
この場合の登録免許税は16万円にということになります。
また、3-1にある登記に必要な戸籍や住民票が手元にない人は新たに取得しなくてはいけませんので、その分の金額もかかってきます。
目安として覚えておくと良いでしょう。
まとめ
このように、登記をせずに放置しておくと様々なデメリットが発生します。
どうせ後で登記をするなら、費用が多額になってまでリスクを抱えてダラダラ行うよりも、最低限の費用で短期間に行う方が絶対にいいですよね。
また、相続発生後の一連の手続きから外れて期間が空いてしまうと、「やらなきゃ!」という気持ちがしぼんでしまい、結局そのままになってしまうケースも見受けられます。
大切な人が亡くなった悲しさは、お葬式や相続手続きが全て終わって一息ついた時に一気にくる方も多いです。
気持ちが沈んでしまい、名義をそのままにしてたくさんのデメリットが発生する前に、相続登記はできるだけ早く済ませましょう。
著者:相続ハウス 彼末彩子(相続診断士)
監修:れみらい法務事務所 大貫智江(司法書士)