借金など、受け取りたくない遺産がある場合、どうしたらいいのか、知りたい方も多いのではないでしょうか?
「相続放棄」は被相続人が亡くなったあとにしかできない手続きですが、「遺留分放棄」は生前でも、死後でも行うことができます。
ただし、その手続き方法は生前と死後で異なります。
今回は、遺留分放棄とはどのようなものなのか、相続放棄とは何が違うのか、生前と仕事で異なる手続きの流れについてご説明いたします。
1.遺留分とは
1-1.遺留分とは
遺留分とは、遺言によって法定相続分を侵害された法定相続人が、一定の割合で遺言を否定して、法定相続分の一部を取り戻せる権利を指します。
日本の法律では、遺言書が遺されている場合、相続は基本的に遺言によって行われます。
しかし、「自分の財産は愛人にすべて与える」など、遺された家族の生活が危ぶまれる内容の遺言もあります。
そこで、遺された家族を保護するために、遺言で他人の手に財産が渡ってしまう場合でも、少しでも取り分が確保されるようにしています。
これが「遺留分」と考えるとわかりやすいでしょう。
1-2.遺留分放棄とは
遺留分放棄とは「この遺留分はいらない」とあらかじめ宣言してしまうことです。
遺留分を有する相続人は、相続の開始前(被相続人の生存中)に、家庭裁判所の許可を得て、あらかじめ遺留分を放棄することができる仕組みになっています。
1-3.相続放棄との違い
相続放棄は相続権を失いますが、遺留分放棄では相続権は残ります。
そのため法定相続分の財産を受け取ることが可能です。
また、遺留分の放棄は、相続人が生前のうちでないと手続きを行うことができません。
2.遺留分放棄をするには
2-1.手続きの流れ
実際に、遺留分放棄をするには、どういう手続きを踏めばいいのでしょうか?
基本的な流れをご説明します。
まず、遺留分権利者となる人が、被相続人となる人の住所地=自宅を管轄する家庭裁判所に、遺留分放棄許可審判の申し立てをすることから始まります。
なお、許可審判が始まったあとに事情が変わり、遺留分放棄を許可するのが相当でなくなった場合、家庭裁判所は職権でこの審判を取り消すことができるとされています。
▼参考:裁判所 遺留分放棄の許可
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_26/
2-2.必要な書類
次の書類が必要になります。
・申立書(裁判所のホームページからダウンロードできます。)
・被相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)
・申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)
同じ書類は1通用意すれば大丈夫です。
また、審理のために必要と認められた場合、追加書類の提出が求められる可能性もあります。
▼参考:裁判所 遺留分放棄の許可の申立書
http://www.courts.go.jp/saiban/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_53/index.html
2-3.費用
自分で行う場合、申し立てに必要な費用は次の通りです。
・収入印紙800円分
・連絡用の郵便切手(家庭裁判所によって異なるので確認が必用)
なお、弁護士などの専門家に相談する場合、相談料がかかります。
実際の金額はばらつきがありますが、相談は30分で5,000円程度が相場です。
3.生前に遺留分放棄をするには?
3-1.遺留分放棄を生前に行うメリット
「うちの家族、相続が起こったらもめそうなんだよな……」「実はあいつには相続させたくないんだけど……」こんなお悩み、抱えていませんか?
実は日本の法律では、生前に相続放棄はできないことになっています。
つまり、相続で起こるトラブルを回避する手段として、相続放棄は使えません。
その代わり、遺留分放棄を認めることで、被相続人の存命中に遺産の分配方法をしっかり考えられる仕組みになっています。
ここまでの話をまとめると、「生前からできる相続対策」という意味で大きなメリットがあるということです。
3-2.家庭裁判所の手続きが必要な理由
遺留分は相続人になる人に認められた権利です。
遺留分放棄は、本来なら相続できるは権利を放棄させてしまうという意味で、慎重な判断が求められます。
そこで、家庭裁判所を通じて手続きを行うことで、慎重な判断を行っているのです。
<遺留分放棄の許可の基準>
特に次の3つのポイントが重視されます。
・本人の自由意思による放棄か
・放棄の理由に、合理性と必要性が認められるか
・代償性の有無(遺留分に見合う贈与を受けているか)
3-3.遺留分放棄の申請を撤回する場合
家庭裁判所に許可審判の申請をし、許可が下りれば撤回が可能ですが、状況や内容にもよるため、詳しくは弁護士など、専門家に相談する事をお勧めします。
3-4.放棄する際の注意点
遺留分放棄を考える場合、遺言書の作成もセットで考えましょう。