不動産を相続する際に、遺産分割で他の相続人と共有名義で相続することを考えている方はいらっしゃいませんか。
相続財産の中で不動産が占める割合は非常に大きく、また、単純に分割できるものではない為、遺産分割の際に争いになってしまうケースが少なくありません。
共有名義にすれば平等な遺産分割をすることができ、相続人間の争いを回避できる為、相続をする際に共有名義にすれば良いのでは?と考えていませんか。
ところが、安易に共有名義にしてしまうと、後々思いもよらないトラブルになる可能性があります。
今回は、不動産を遺産分割する前にこれだけは知っておきたい共有名義不動産についての基礎知識をご紹介したいと思います。
1.共有名義とは
共有名義とは、1つの不動産を複数の人が共有で持っている状態とのことをいいます。
例えば、父の相続が発生し、子2人でその不動産を1/2ずつ相続した場合、「長男1/2」、「次男1/2」となります。共有名義となっている場合、共有者が有する持分割合があります。
この場合ですと、長男と次男のそれぞれの持分割合は1/2です。
この持ち分割合は必ずしも「2人の共有だから半分ずつ」というものではありません。
長男が8割、次男が2割といった様に持ち分割合が均等ではない場合もあります。
このような場合でも「共有名義」といいます。
2.どうして共有名義になるのか
共有名義になってしまう理由の1つが、複数の相続人がいる場合に法定相続分もしくはすべての相続財産を相続人間で平等に遺産分割をする場合です。
法定相続分もしくは平等に遺産分割をすることで、争いを回避することができると考える方もいらっしゃいます。
しかし、このような遺産分割をする場合、不動産も相続人すべてが共有名義で持つこととなります。
預貯金等の金融資産は、比較的簡単に分割することができます。
しかし、不動産は価値が高く、相続人のうち誰か1人が相続をすると、他の相続人が相続する財産の総額に偏りが出ることがあります。
その為、結果として相続人が平等に財産を相続することができなくなります。
相続財産が不動産しかなく、預貯金等がほとんどない場合等は遺産分割協議が困難になる場合があります。
その為、遺産分割が上手く行かなかった場合や相続人間の争いを避ける為に、共有名義にしてしまうというケースが多いのです。
また、相続を原因とせずに共有名義になる場合もあります。
例えば、不動産を購入する際に頭金の一部を親に負担してもらった為に共有名義にすることや購入をするにあたり1人の単有名義では負担が大きくなってしまう為に夫婦で共有名義にしておく等といったケースです。
今回は、相続を原因として共有名義になった場合にしぼって解説をしていきます。
3.相続で受け取った不動産を共有名義にするメリット
3-1.原則として平等な遺産分割が実現できる
遺産分割をする際に、共有名義にすれば原則として不動産を平等に分割することができます。
その為、争いを回避することができます。
3-2.勝手に処分することや担保に入れることができない
共有名義になっている不動産全体の売却やその不動産全体を担保に入れて借入等をする場合には、原則として共有名義人全員の同意がないとすることができません。
つまり、共有名義人1人の意思で勝手に行うことはできません。
その為、先祖代々守ってきた大切な不動産等、今後他人に渡すことなく守っていく不動産がある場合は、共有名義にすることで他の相続人によって勝手に売却されることや担保に入れることを一定程度防ぐことができます。
ただし、実際には稀なケースになりますが、共有者の持分のみを購入することや名義人の持分のみを担保に入れて借り入れをすることはできないわけではありません。
3-3.マイホーム特例を共有者分だけ使える
不動産を売却した場合、原則として「所得税(譲渡所得)」という税金がかかります。
しかし、マイホーム(自宅)を売却した場合にはその税金を大幅に下げる特例があります。
通称マイホーム特例と呼ばれる3,000万円の特別控除です。
マイホーム特例は、売却金額から取得費及び経費を差し引いた残りの金額からさらに3,000万円を差し引くことができます。
この点、要件等が細かく設定されていますが、相続で空き家になった親等のマイホーム(自宅)にも、この特例が使えるようになりました(相続が発生した日から起算して3年を経過する日の年の12月31日まで、かつ、特例の適用期間である平成28年4月1日から平成31年12月31日までに譲渡することが必要です)。
この特例を使えれば大幅に税金を抑えることができます。
そして、この特例を利用する際に、共有名義の場合には各人で3,000万円の控除枠を使うことができます。
例えば、2人の共有名義不動産を売却した場合には6,000万円まで控除枠が広がるというメリットがあります。
4.共有名義のデメリット
共有名義にした場合、下記のようなトラブルが発生する可能性があります。
4-1.権利関係が複雑化
後々の相続のことを考えると、相続人が増え手続きが煩雑になる可能性があります。
例えば、1つの不動産を3人がそれぞれ1/3ずつの持分を持つ共有名義となっていた場合を考えてみましょう。
共有者に相続が発生した際は、相続人は各共有者が持つ持分を相続することとなります。
相続人の数や遺産分割によって、持分が1/3よりさらに細分化され3人を超える数の共有名義になります。
そのようになった場合、売却や担保に入れる手続きをする際には、原則としてすべての共有者の承諾が必要となる為、思うように手続きが進まなくなる可能性があります。
また、共有者1人の相続が発生した際に相続人に名義変更手続きを行わず、次(共有者から見て子)の相続が発生した場合、さらにその次(共有者から見て孫)の相続人が引き継ぐこととなります。
このように、相続人がどんどん増えていくのです。
4-2.売却・担保提供が困難
共有名義にしていると、原則として売却や担保提供を勝手にすることができなくなる点はメリットでもありますが、同時にデメリットともいうことができます。
例えば、もう誰も使わない共有名義の土地を売却しようと考えているとします。
その際、原則として共有者全員の承諾を得なければ売却ができない為、1人でも売却に反対する人がいる場合や行方がわからなくなってしまった人等がいる場合、売却することができません。
また、売却や担保提供をする際に必要となる書類も原則として所有者分用意しなければなりません。
共有している数が多ければ多いほど、揉める原因になるだけではなく、手続きも煩雑になります。
5.共有名義にしないための4つの対策
遺産分割の際に共有名義にならず、かつ、揉めないようにする為にできる主な対策をご紹介します。
5-1.遺言書を作成する
誰がどの不動産を相続するか遺言書で書き記しておくことによって、相続人間の争いを防ぐことができます。