今まではお金持ちの税金だと思われていた相続税ですが、2015年、相続税の基礎控除が引き下げられたことにより、相続税の対象となる方が大幅に増えました。
首都圏に持ち家のある方は、特に注意が必要です。
しかし、相続税がかかるかもしれないといわれても、まだ先の話でピンとこない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
相続税の対策は生きているうちにしかできません。
そこで、相続税の対策として生命保険を最大限活用する方法をお伝えいたします。
来る相続のために、しっかりと税対策をしておきましょう。
1.相続税の対象になる?
1-1.基礎控除とは
相続税は相続した財産に対して課税される税金です。
しかし、相続した財産すべてに課税されるわけではなく、一定額を控除することができます。
それを基礎控除額といいます。
相続財産の合計額が基礎控除額より少ない場合には相続税は課税されません。
1-1-1.民法の法定相続人との違い
民法での相続人と相続税法の基礎控除の法定相続人とは必ずしも一致しません。
まず、民法での養子は何人でも相続人とすることができますが、相続税法の法定相続人にできる養子の数には制限があります。
<法定相続人にできる養子の人数制限>
被相続人に実子がいる場合: 1人まで
被相続人に実子がいない場合: 2人まで
とされています。
なお、以下の場合は、養子の人数制限に含まれません。
・特別養子縁組によって養子になった場合
・被相続人の配偶者の実子で養子になった場合
また、相続放棄をした人は民法上の相続人ではありませんが、相続税法上は相続の放棄はなかったものとして、基礎控除の人数に入れます。
1-2.基礎控除額の計算方法
基礎控除の額は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算します。
具体的な計算例は次の通りです。
(1)相続人が配偶者と実子2人の場合
3000万円+(600万円×3人)=4800万円
(2)相続人が配偶者と実子2人と養子1人の場合
3000万円+(600万円×3人)=4800万円
(3)相続人が配偶者と実子1人と養子2人の場合
3000万円+(600万円×2人)=4200万円
▼詳しく知りたい方はこちら
【基礎控除額を計算して相続税がかかるかチェックしよう!】
2.死亡保険金はみなし相続財産になる
2-1.みなし相続財産とは
死亡保険金や死亡退職金などは、相続人が死亡した後に、会社や保険会社から支払われるもので、相続開始の時点ではまだ被相続人の財産ではありません。
そのため、民法上は相続財産にはなりません。
しかし、相続税法上では相続財産とみなしてこれらを課税対象としています。
これをみなし相続財産といいます。
2-2.みなし相続財産の非課税額
生命保険や死亡退職金の主な目的は相続人の生活保障です。
そのため、一定額には課税しない非課税額が設けられています。
非課税額は、500万円×法定相続人の数で計算されます。
この法定相続人は基礎控除と同様に相続放棄した人も人数に入ります。
また、みなし相続財産は相続放棄をした人でも受け取ることができます。
ただし、相続放棄をした人がみなし相続財産を受け取った場合、みなし相続財産の全額が相続税の課税対象になるので注意が必要です。
3.生命保険の活用方法
3-1.相続税対策
みなし相続財産の非課税額を利用して、相続税の課税価格を減らすことができます。
たとえば、1億円を現金で相続した場合、基礎控除を引いた残りの財産に課税されますが、同じ金額を死亡保険金で相続した場合、基礎控除に加え、みなし相続財産の非課税限度額を引いた残りの財産に課税されますので、その分相続税が少なくなります。
3-2.遺産分割の準備資金
相続人が複数いる場合、遺産分割で揉める可能性があります。
たとえば、相続財産が分割しづらい家や土地しかなく、後を継ぐ長男が家と土地を相続し、他の兄弟へ相続できるものが何もないということがあります。
そうした場合、他の兄弟が本来の相続分を主張して揉めてしまう可能性がありますので、家と土地を相続する長男が、他の兄弟が本来相続できる分を現金で代わりに支払うということもできます。
これを代償分割といいます。
ただし、長男の手許に現金がないとそれすらできません。
そこで、被相続人の生命保険については死亡保険金の受取人を長男にしておけば、生命保険の死亡保険金は遺産分割の対象とはなりませんので、その死亡保険金で他の兄弟へ本来相続する分を支払うことができます。
3-3.納税資金準備
土地や家などの現金化しづらい相続財産が多くあり、相続税の納税額が多額になってしまう場合の納税資金の準備として、生命保険の死亡保険金を活用します。