「自分は税務調査の対象にならないから大丈夫!」なんて思ってはいませんか?
税務調査はよく法人に対して行われるもので、個人にはあまり関係のないことと思われがちですが、実は相続税は税金のなかでも税務調査の対象になりやすいものなのです。
今回はなぜ相続税が税務調査の対象になりやすいのか、また税務調査はどのように行われるのか、詳しく解説いたします。
最近相続をしたばかりの方やこれから相続をする予定の方は、いつ税務調査の対象になってもいいように、相続税の税務調査に関する基礎知識を身に付けておきましょう。
1. 相続税の税務調査とは
1-1. 相続税は税務調査の対象になりやすい!?
何千万円というお金が動くときに発生するものであることから、相続税は税務調査の対象になりやすいといわれています。
相続税には基礎控除があり、たとえ法定相続人がひとりしかいなかった場合でも3,600万円までは課税されないようになっています。
相続税は控除額を超える高額な財産を相続した人だけが納めるものなので、税務署は納められた相続税が本当に申告した金額と同じなのかを確かめるために、税務調査を実施するのです。
1-2. 税務署はどうやって個人資産を把握しているのか?
人が亡くなったときは「死亡届」を市区町村役場に提出することになるのですが、死亡届を受け取った市区町村役場は、死亡した人がいることを「固定資産税評価額の情報」と一緒に税務署に通知しています。
税務署は市区町村役場からもらった情報をもとにして、死亡した人がどれくらいの不動産を持っているのかを把握しています。
1-3. 税務調査の多い時期
相続税に限らず、税務調査は確定申告の処理や人事異動がなくて時間的余裕のある8月~11月の時期に多く行われます。
ただし調査開始時期に決まりがあるわけではないので、税務調査の連絡が相続人のところにくる可能性は、1年を通して常にあります。
2. 税務調査で指摘されやすい金融資産
2-1. 被相続人の預貯金
税務署は、独自に個人の銀行口座や証券口座の残高確認や入出金の確認をすることができます。
そのため相続開始直前に被相続人の口座から高額な金額が引き出されていたりすると、税務調査時にその使途について質問されることがあります。
調査の対象になった場合は、基本的に被相続人や自身の預貯金については、すべて税務署に把握されていると思っておいたほうがいいでしょう。
2-2. 被相続人の生命保険
亡くなった人が被保険者で相続人が保険金受取人になっている場合、生命保険の死亡保険金は相続税の対象になります。
税務署は死亡保険金の金額についても把握しているので、保険金額と相続税の計算が合わなかったりすると、詳しく調査されることになるでしょう。
2-3. 家族名義の預金
子どもが名義人になっている預金口座でも、実質的に入出金をしているのが親である場合は、親が亡くなったときに相続財産の対象とみなされます。
そういった理由から、名義人と実際の利用者が異なる預金口座は税務調査で細かく調べられることになります。
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3. 相続税の税務調査の流れ
3-1. 調査の事前通知
税務調査が行われることが決定すると、調査予定日の7~10日前(申告を税理士に依頼していない場合は)に相続人の代表者に対して税務署員から連絡が入ります。
その際に税務署側から日程を提案されることになるのですが、先約ややむを得ない事情がある場合は日程を調整してもらうことができます。
3-2. 聞き取り調査
税務調査当日は多くの場合は被相続人の自宅が調査場所となり、午前に聞き取り調査、午後に現物調査が行われます。
聞き取り調査では調査員が相続人に対して「被相続人に関する質問」や「遺産分割や相続税の納税に関する質問」「相続人の財産に関する質問」などをします。
3-3. 現物調査
現物調査では財産の管理状況を調査するために、その家にある金庫やタンス、引き出し、押入れ、さらには印鑑や通帳などが調査されることになります。
調査員は現物調査を行いながら、聞き取り調査の回答内容と現物が一致しているかについても確認します。
3-4. 修正申告
税務調査の結果、申告内容に誤りがあると税務署が判断すると、税務署長が納税義務者に対して修正申告などの勧奨をします。
勧奨に応じなかった場合は対象の相続人に対して更生処分がされ、加算税が賦課されることになります。
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4.税務調査前にしておくこと
申告漏れがないにも関わらず税務調査の対象になってしまった場合には、申告書に記載した内容が間違いないことを証明するための証拠となるものを事前に揃えておきましょう。
また、申告時に税務代理をした税理士がいる場合は、税理士の指導のもと税務調査のリハーサルをしておくと、当日も落ち着いて対応できることでしょう。
5.相続税の還付
税務調査の結果、相続税を追加で徴収されることになった方の中には、還付請求をすることで、追加徴収されていた相続税の一部を取り戻すことができる場合があります。
還付請求の方法については、以下の記事を参考にして頂ければと思います。