遺留分減殺請求には時効があることをご存じでしょうか?
相続の際には、身近な法定相続人に対して与えられる最低限の遺産の割合が保証されていて、これを遺留分といいます。
この遺留分の権利が侵害された際には、遺留分減殺請求を行うことで最低限の遺産を取り戻すことができるのですが、この制度を利用するにはさまざまな注意点もあり、その中の1つとして時効があることが挙げられます。
ここでは遺留分減殺請求の時効について、時効の進行を止めるための方法や、行使する前に覚えておいて欲しいポイントについて紹介します。
1.遺留分減殺請求とは
遺留分によって保障されている割合の財産が自分にまで行き渡らず、受け取るはずだった財産が他の相続人に侵害されていると感じた場合、請求することによって侵害された財産を取り戻すことができます。
そのために必要な請求の手続きを「遺留分減殺請求」と呼びます。
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2.遺留分減殺請求に時効はあるのか
法定相続人の財産を保障するための遺留分減殺請求ですが、その権利は永久ではありません。
民法第1042条では、遺留分減殺請求の期限について以下のように定めています。
滅殺請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び滅殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。
相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。
このように、遺留分減殺請求に関しては時効の期限が決められています。
期限を過ぎてしまった場合、遺留分減殺請求の権利が消滅してしまいます。
保障されている財産を受け取るためには、何らかの対策をたてなければいけません。
3.時効の進行を止めるには
遺留分減殺請求の時効の進行は、催告や請求といった権利の行使を行うことによって、止めることができます。
そのためには、どのような行動をとる必要があるのでしょうか?
一般的な方法としては、遺留分を侵害した相手に遺留分減殺請求の文書を内容証明郵便で送ることがあげられます。
内容証明郵便とは、送った郵便物の内容を郵便局が保障してくれる郵便です。
年月日だけを保障する配達証明郵便や、郵便を出したことを保障する特定記録郵便とは違い、文書の内容の証明に重点がおかれているのが内容証明郵便の特徴です。
遺留分減殺請求の文書にはこれといった定型が存在していませんが、その文書が遺留分減殺請求をする意思表示であることが伝わる内容であることが重要です。
たとえば「本通知書において、●●は△△に対して、遺留分減殺請求をする旨の意思表示を行います」といった形であれば、こちらの意思が相手に伝わるでしょう。
ただし、相手が受け取った遺贈や生前贈与といった相続の中で、具体的に滅殺請求を行う内容が判明していれば、その内容を記載してください。
4.遺留分減殺請求の時効についての注意点
権利を行使する方法は、時効の進行を止める上で有効ですが、すべての遺留分減殺請求の時効が止まるわけではありません。
また、内容証明郵便の送付方法や、時効の基準についても、覚えておいてほしい注意点があります。
4-1.金銭の返還の場合は、権利行使後も時効が発生
多くの財産に関しては、遺留分減殺請求の文書を内容証明郵便で送ることによって時効の進行が止まります。
ただし現金の財産に関しては、権利の行使を行って金銭をもらう権利(金銭債権)を得ると、遺留分減殺請求権とは別に10年の時効が発生します。
そのため、現金の財産について遺留分減殺請求を行う場合には、新しい時効が発生することを考慮して、次の手続きに移るようにしましょう。
4-2.内容証明郵便の送付は、配達証明付内容証明郵便で
郵便に配達証明を付けることによって、送った年月日が記録されます。
この記録は、権利が発生している期限内に遺留分減殺請求を行使したことを証明する手段の1つとなります。
そのため、内容証明郵便を送る際には、配達証明の付いた形で送るようにしましょう。
4-3.「知らなかった」は通用するか?
法律上は、相続があったことを知らなければ10年は時効が消滅しないといわれています。
しかし実際のところ、どのタイミングで知ったのかを証明する明確な手立ては存在していません。
そのため、原則としては相続が発生してから1年というのが一般的となっています。
本当に知らなかったとしても主張が通らない可能性があるので、身近な人の近況には気を配っておくことが望ましいです。
5.まとめ
自分が持っている遺留分の権利が侵害されてしまうことは、当の相続人にとっては非常に悔いが残る出来事です。
しかし、相続において、遺留分が侵害されているのに何もしないということは、その侵害を認めたことと同じなのです。
1つの意思表示として、時効内に遺留分減殺請求を行いましょう。
ここで紹介したいくつかの情報が、その際の役に立つことができれば幸いです。