空き家を相続放棄するには、どのようなメリット・デメリットがあるのか、知りたい方も多いのではないでしょうか?
1人で生活していた親が亡くなって、実家が空き家になった場合など、相続する家や土地があっても自分では住めないケースがよくあります。
空き家を相続して、他人に売ったり貸したりする場合には、改築や解体などの費用がかかってしまいますので、相続放棄を選ぼうとされる方も多いかもしれません。
しかし、安易に相続放棄を選択してしまっては、空き家以外の財産も引き継ぐことができなくなってしまったり、相続人全員が空き家の相続放棄を行ったとしても、管理責任からは逃れられないなど、デメリットも存在しています。
そこで今回は空き家の相続放棄について、知っておきたい基礎知識をお伝えします。
空き家の相続放棄をお考えの方は必読です。
1. 空き家の相続放棄が増えている理由
1-1.相続しても住むことができない
空き家の状態で相続される不動産は、親の住んでいた実家であるケースがほとんどです。
子どもたちは自身の仕事や家庭の都合で、他の場所で生活をしているなど、相続しても子ども自身は住めない状況だったりするので、空き家を相続放棄しようとする人は少なくありません。
1-2.費用がかかってしまう
空き家をそのままの状態で相続すると、自分たちが住んでいる家以外にも、空き家の維持費や固定資産税などが余分にかかってしまいます。
売ったり貸したりする場合でも、土地の上に古い家屋が乗ったままだと、返って価値が下がってしまうことが少なくありません。
さらにリフォームや解体をして価値を高めたとしても、そのための費用や相続税などと天秤にかけると、結果的にマイナスの相続になるケースがあることも理由として考えられます。
2.空き家の相続放棄
2-1.メリット
相続の方法には、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3種類の方法があり、このうち、「相続放棄」は、最初から相続人ではなかったということにしてしまう方法です。
他の相続人が相続する場合でも、自分だけ相続を放棄するということができ、手続きも家庭裁判所に申し立てるだけなので、簡単です。
2-2.デメリット
2-2-1.他の財産も相続できない
相続放棄を行うと、空き家だけでなく、他の財産に関しても相続の権利がなくなるため、万が一、空き家以外に被相続人名義の財産がある場合には、それも引き継ぐことができなくなります。
また、一度相続放棄してしまうと撤回できないこともデメリットといえるでしょう。
2-2-2.管理責任が残る
相続人全員が空き家の相続放棄をした場合、管理する人がいなくなり、廃屋になる可能性がありますが、その場合でも単純に不動産を放棄したとはみなされません。
民法940条の規定により、相続放棄をした場合でも、放棄した相続財産の管理が始まるまでは、自分の財産と同様の注意を払って管理を継続しなければなりません。
【第940条】
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
例えば、廃屋が放火されて火事が燃え広がった場合や、不審者が占拠した場合、倒壊して近隣住民に迷惑をかけた場合には、相続を放棄したにもかかわらず責任を負うことになったり、いつ壊れるかわからない古い家屋をそのまま放置した場合、行政代執行で解体が行われ、その費用を支払わなければならないケースもあります。
相続放棄したら後は無関係とはならないため注意が必要です。
また、自分が相続放棄をしたとしても、法定相続人として次順位の人に空き家の相続の権利が回っていくだけなので、相続放棄したことを次の順位の人に知らせずにいた場合、次の人が自動的に空き家を引き継ぐことになる可能性があるので、注意しましょう。
なお管理責任を負わなくて済むようにするためには、裁判所に対して相続財産管理人の選定申立てを行い、相続財産の管理を引き継ぐ必要があります。
▼相続財産管理人について詳しく知りたい方はこちらをご覧下さい。
【相続人がいない時はどうする?相続財産管理人を立てて解決】
3.相続放棄の手続き
相続放棄をする場合には、相続が始まったことを知った日から3ヶ月以内に、各種必要となる書類をあつめて、家庭裁判所へ提出し、相続放棄の申述を行う必要があります。
▼相続放棄について詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
【これを読めば相続放棄は完璧!相続放棄の総まとめ】
なお、空き家の資産価値や他の財産について調べるのに時間が足りないという場合には、家庭裁判所に承認や放棄の熟慮期間の伸長を申し出ることもできます。
相続人の1人1人それぞれが申し立てをする必要があり、うち、1人が伸長の申し立てをしても、他の相続人の熟慮期間は変わりません。
また家庭裁判所が伸長を認めるかどうかの判断を下すのに1~2週間ほどかかります。
もし、伸長が認められず、しかも、回答が来る以前に最初の熟慮期間の3ヶ月が過ぎてしまっていたら、もう相続放棄をすることはできません。
熟慮期間の伸長を希望する場合には、早めに専門家へ相談し、手続きをすることをおすすめします。
4.まとめ
空き家の相続放棄は、手続き自体は簡単ですが決して安易なものではありません。
なので、空き家を相続放棄する場合は、これらのリスクもよく考えたうえで行うようにしましょう。