遺産分割協議書を作成する方がいいのか迷っている方も多いのではないでしょうか。
今回は作り方のポイントをまとめた上で、相続人が特殊な場合について、及び作成しなかった場合や変更の場合の注意点などをお伝えいたします。
一般的な場合のサンプルもダウンロードできますので、ぜひ参考にしてください。
1. 遺産分割協議書とは
遺産分割協議書とは、協議により各相続人の取得すべき財産が確定した時に作成する書類で、目的は以下の通りです。
- 相続人全員の合意内容を明確にする
- 協議の内容を書面に残し、後日の紛争を避ける
- 財産(預貯金・株式・不動産等)の名義変更に際し、法務局や金融機関等に提出する
- 相続税の申告書に添付する
2. サンプル(一般的なもの)
一般的な遺産分割協議書のサンプルをご用意いたしました。下記よりダウンロードください。
サンプルダウンロード(Word文書)
3. 一般的な財産の書き方
不動産(土地・建物)、金融機関の口座、有価証券、国債、自動車、保険、電話加入権、債務等の財産を個別に記載します。後の紛争の防止や円滑な手続きのために、一つ一つを正確に記載しましょう。
3-1.被相続人について
遺産分割協議書の冒頭に、被相続人の情報(氏名、本籍地、最後の住所地、死亡年月日等)を記載します。
3-2.現預金について
手元現金についてはその金額を、預金については、金融機関名・支店名・種類・口座番号・相続開始時の残高を明確に記載します。
3-3.不動産について
登記事項証明書の記載通りに、土地であれば所在・地番・地目・地積等を、家屋であれば所在・家屋番号・種類・構造・床面積等を正確に記載します。
3-4.保険について
生命保険金・死亡保険金は受取人があらかじめ指定されているため、原則として遺産分割の対象ではなく、遺産分割協議書に記載はしないことが一般的です。
3-5.債務について
債務については、原則として各相続人が相続分に応じて負担するものですが、 相続人間では、誰がどのように負担するか決めておく必要があります。
ただし、相続人間での債務の負担の決定は、債権者には通用しません。債権者から法定相続分に応じた債務の返済を請求された時には、支払いの義務が生じますので注意が必要です。
3-6.代償分割について
代償分割とは、ある相続人が、遺産を他の相続人よりも多く取得する場合に、他の相続人に代償として現金等を支払うことをいいます。
代償分割を行う場合には、その金額(もしくは代償物)・支払方法・期限についても記載します。
一つご注意頂きたいのは、代償による税金です。代償が現金の場合は特に問題はありません。しかし、代償がマンション等不動産の場合には、税金の問題が出てきます。税金上、不動産を渡した人は、受取った人に売ったことになるため、渡した財産の時価が、その財産の取得価格を上回る場合には譲渡益が発生し、所得税が生じます。
一方、マンションを受取った人は、買ったことになり、取得の際の税金(不動産取得税)が生じます。
3-7.新たな遺産について
遺産分割協議後に判明した遺産については、あらかじめ誰が取得するかを遺産分割協議で決めておけば、新たな財産が見つかった時に再度遺産分割協議をする手間がなくなります。
3-8.署名について
協議書の本文はワープロでも構いませんが、署名欄に関しては、相続人全員が自筆でサインし、実印を押すことが望ましいです。(不動産の名義書換の場合には記名+実印でも可とされていますが、署名+実印の方が証明力が高いといえます)遺産分割協議を行った上で、財産を取得しなかった相続人の署名(又は記名)・押印も必要です。「私は署名していない」といった後のトラブルを防ぐためです。ただし、相続欠格者、相続放棄者は相続人とはなりませんので 署名(又は記名)・押印しません。
協議書が数ページにわたる場合には、相続人全員の割印を押します。
4. 作成のポイント
4-1.全財産を載せていない場合
(1)遺産分割協議後に、新たな財産が発見される場合があります。多い事例は
1.故人の凖確定申告の還付金
2.故人の生命保険の入院給付金
3.故人が貸し付けていた債権
4.新たに見つかった少額預貯金口座
5.故人の所有していた美術品・骨董品
6.故人の生協積立などの解約金
等です。
後に財産が見つかった場合の取り決めがない場合、財産が発見される度に再度遺産分割協議をしなければいけなくなります。
そのため、遺産分割協議書に記載されていない財産に関してもあらかじめ誰が取得するかを決め、文中に記載しておきましょう。
(2)遺産分割協議書は、不動産についてのみ、預貯金についてのみ等、財産の品目ごとに作成することも可能です。
その場合にも、全ての遺産分割協議書に相続人全員の署名・捺印を行います。
4-2.印鑑証明書の期限について
遺産分割協議書に添付する印鑑証明書は、有効期限に特に決まりがないため、相続登記をするまでの間に印鑑証明書の発行日から3ヶ月を過ぎても、法律的には問題ありません。
ただし、金融機関での口座解約手続きなどをする際には、3ヶ月以内の印鑑証明書が必要になる場合もあります。また、不動産登記の際にも、実務的には直近(おおむね6ヶ月以内)のものが必要になる場合があります。
4-3.遺言書がある場合
遺言書が遺されている場合では、原則として、その遺言書どおりに相続をすることになります。