養子は相続財産を貰えるの?養子縁組を行う際の注意点

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る
相続 養子

養子縁組とは、親子関係のない者同士を、法律上、親子関係があるものとすることです。
実はこの養子縁組が相続と関係があることをご存知でしたでしょうか?

一見、相続とは関係のないように思われる養子ですが、節税対策等のために、養子縁組を行うことを考える方もいらっしゃいます。

相続と養子にはどのような関係があるのか?相続が発生した時に、養子はどのように扱われるのか?
養子縁組を行うメリットとデメリット、養子縁組を行う上での注意点等についてご紹介させていただきます。

養子の制度は、相続税法と民法で違いがあったりと、複雑な制度です。
誤った認識のまま、安易に養子縁組を行ってしまい、後々トラブルになってしまった…なんてことにならないように、相続と養子の制度を知る上でご参考にしていただければと思います。

スポンサードリンク

1.養子とは

養子縁組の制度には、「普通養子」と「特別養子」の2つの種類があります。
それぞれどのように違いがあるのでしょうか。

1-1.普通養子

普通養子は、実親その親子関係を存続したまま、養親とも親子関係を作るものになります。
普通養子縁組で分かりやすい例としてポピュラーなものですと、「婿養子」です。娘の配偶者を家系に入れるということになります。

結婚等ではなかったとしても、例えば自分の跡取りとして選んだ人物を家系に加える際に、この普通養子縁組が行われます。
養子縁組を行った場合には、戸籍上に「養子」「養女」として記載され、記録が残ります。

1-2.特別養子

特別養子は、戸籍上、実親との関係を断ち切り、完全に養子は養親のみとの親子関係になる養子縁組制度です。
特別養子となると、養親が養子を実子として扱うこととなります。
戸籍上の記載も、「実子」と記載がされます。

<普通養子縁組と特別養子縁組のちがい>

普通養子縁組 特別養子縁組
目的 「家」の存続(家名を絶やさないため)
子のいない夫婦が財産を継承するため
家業を守るため・・・等
子の福祉、利益を図るため
(実親が子を育てることが困難な状況から、子を守るため)等
養子の年齢 実親よりも年少者で、尊属でなければ年齢制限なし 0歳~6歳まで
(裁判所への申し立て時に原則6歳以下)
養親の年齢 成人であること
未婚でも可能
婚姻していること
また、夫婦の1人が25歳以上と、もう1人が20歳以上であること
縁組の手続き 契約により成立(当事者の合意)
市区町村役場に養子縁組届を提出をする
家庭裁判所へ特別養子縁組の申し立てをする
家庭裁判所が養親の調査を行い、実親の同意を確認
その後、家庭裁判所の審判により、成立するかが決定
決定後、市区町村役場に届出を提出
成立にかかる期間 1~2ヵ月程度 試験養育期間6ヵ月の後、家庭裁判所の審判
縁組の要件 ①養親は成人していること
②自分より上の世代の血族は養子にはできない
③養子にする子が15歳未満の場合は、実親の承諾が必要
④養子にする子が未成年者の場合は、家庭裁判所の許可が必要
⑤未成年者を養子にする時、養親が既婚者の場合には夫婦どちらも養親になる必要がある
⑥養子にする子が成人で、養子にする時、養親が既婚者だった場合には、夫や妻からの同意が必要(養子にする子が成人している場合は、夫婦どちらかだけが養親になることも可能)
①養親は成人していること
②養親は結婚していないとならない
③夫婦揃って養親となる必要がある
④養子にする子は6歳未満でなければならない(審理の途中で6歳を過ぎていたとしても、6歳の時点で特別養子縁組の申し立てを行っていた場合には良い)
⑤実父母の同意が必要
⑥家庭裁判所の手続きが必要
離縁の可否 養子が15歳以上であれば、当事者の合意によりいつでも可能(養子が15歳未満の場合は、法定代理人が行う)
養親が死亡した後に離縁したい場合には、家庭裁判所の許可が必要
原則として離縁は認められない
特に、養親からの離縁は認められない
離縁の申し立て 市区町村役場に養子離縁届出書を提出する 養子でいることが子にとって、福祉を害する等の場合(虐待等)のみ、養子、父母、検察官が家庭裁判所に申し立てを行う
実親との関係 存続する(実親と養親の2組の親を持つ)
養子は養親の姓を名乗る
終了する(養親だけが親子の関係になる)
養子は養親の姓を名乗る

2.相続と養子

2-1.実子と養子の違い

実子は血縁関係のある子です。養子は血縁関係のない子です。

2-1-1.嫡出子

実子の中から、さらに嫡出子と非嫡出子に分かれます。
嫡出子とは、法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子のことを言います。

2-1-2.非嫡出子

非嫡出子とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子のことを言います。
例として、愛人との子や、事実婚の男女の間に生まれた子等があげられます。

2-2.養子は相続人になれるか

民法における法定相続分は、実子と全く同じであり、差をつけることはありません。
実子と同じように相続人になれますし、同じ割合で財産を受け取ることができます。

2-3.何人まで相続人になれるか(民法と相続税法)

養子縁組で養子となった者は、養親の相続人となります。
養子が数人いる場合でも、相続人になれる養子の人数に制限はありません。

仮に養親に10人の養子がいたとしても、全員相続人になります。
ですが、相続税法では、相続人としてカウントできる養子の数には上限があります。

・被相続に実子がいれば、養子は1人まで
・被相続人に実子がいなければ、養子は2人まで

このように、相続税の計算においては、法定相続人とする養子の数に上限が設けられるようになりました。

なぜ、このような制度が設けられたのかといいますと、相続税の計算においては、相続財産の総額から「基礎控除額」を控除します。
下記が基礎控除額の計算式になります。

・相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

つまり、相続人の数が増えると、自動的に基礎控除額が増えるというわけです。

また、死亡保険金や死亡退職金を相続人が受け取る場合、それらも法定相続人の数に応じて1人×500万円までは非課税になります。
こちらも、法定相続人が増えると、非課税になる金額が多くなります。

以上のことから、法定相続人の数を増やせば増やしただけ、納税する相続税が減るのでは・・・と、養子縁組を行う行為を防ぐために、このような上限が設けられているわけです。

ただし、これは相続税の計算においての話であって、民法上では、養子は全員相続人になりえます。
相続税の計算と民法では、考え方が違うということを、お含み置きください。

2-4.養子と実親の相続

養子縁組をした場合、実親との相続はどうなるのでしょうか。
これは、養子縁組の種類によって、扱いが異なります。

普通養子縁組の場合は、1-1で述べたように、実親との関係は存続したまま、養親の養子となりますので、実親の相続が発生した場合には相続人となります。
また、養親の相続が発生した場合も、養子は相続人となり、実親と養親2組の親の相続権を持つことになるのです。

特別養子縁組の場合には、実親との親子関係は断ち切られることになりますので、養親の相続の時にのみ、相続人になります。

2-5.養子縁組と代襲相続

代襲相続とは、相続開始時に法定相続人が亡くなっていた場合に、代わりに代襲相続人が相続人となり、本来の相続人と同様の割合で財産を取得することです。

では、養子縁組をした養子が、養親より先に亡くなっており、養親の相続が発生した場合に、養子の子は養親とは養子縁組をしていませんが代襲相続人になれるのでしょうか?
これは、養子が養子縁組を行ったタイミングで扱いが変わってきます。

養子は、養親と養子縁組を行った日から法定血族関係に入ると、民法で定められています。
養子と養親は、その時点から親族関係になりますが、養子の親族とは、親族関係にはなりません。
そのため、養子縁組を行った際に、養子に子がいた場合(養親の孫となる)には、すでに生まれている養子の子とは親族関係にはなりません。

したがって、養子縁組後に生まれた養子の子は、養親の代襲相続が可能で、養子縁組前に生まれていた養子の子は、養親の代襲相続は不可能です。

<養子と代襲相続>
相続 養子

3.どのような場合に養子縁組をするのか

3-1.孫を養子にする

通常、被相続人の財産は、被相続人⇒子⇒孫と順を追って相続する流れになりますが、被相続人の意思でどうしても孫に財産を直接遺したいという場合には、孫を養子にすることは有効な手段と言えるかもしれません。

3-2.甥や姪、親戚や知人を養子にする

養子縁組を行うことで、養子となり財産を受け取ることができます。
遺言書にて財産を遺す指定をしても良いですが、養子にすることにより、実子と同じ扱いになるため、確実に財産を遺せます。
ただし、孫が養子になった場合、相続税の計算上、税金が2割加算になりますのでご注意ください。(「4-2-2.孫養子は2割加算」参照)

3-3.配偶者の連れ子を養子にする

たとえば、被相続人が後妻と再婚したとします。後妻には連れ子がいました。
被相続人の相続発生後、後妻は配偶者として財産を受け取ることができますが、後妻の連れ子には相続権はありません。連れ子に財産を遺すためには、養子縁組を行って実子と同じ扱いにしてあげるのも、一つの手です。

逆に、事情があって連れ子に財産を遺したくないという場合には、養子縁組を行わなければ、連れ子は相続人になれません。

3-4.子の配偶者を養子にする

配偶者の家系が女性ばかりで、事情があって娘の婿を養子にすることも考えらえれます。
その場合には、婿養子となり、相続時には実の娘と同じように相続人となります。

4.養子縁組のメリットとデメリット

4-1.メリット

4-1-1.遺産に係る基礎控除額が増える

・相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

養子縁組を行い、法定相続人が増えるということは、その分、基礎控除額も増えるという訳です。

4-1-2.生命保険の非課税枠が増える

生命保険の受取金についても、非課税枠があります。

・500万円×法定相続人の数

したがって、こちらも養子縁組を行うことにより法定相続人が増えれば、生命保険の非課税される額も500万円増えます。

4-1-3.死亡退職金の非課税枠が増える

死亡退職金にも、生命保険と同様に非課税枠があります。

・500万円×法定相続人の数

4-1-4.累進課税の緩和

相続税は、相続財産の総額が多いほど、相続税の税率が高くなる累進課税方式です。
法定相続人の数が多ければ、基礎控除額が増え、課税対象となる財産層が少なくなります。
これにより、税率が下がることもあります。

4-2.デメリット

4-2-1.遺産分割協議がまとまらない可能性が出てくる

相続人全員の合意が必要となる遺産分割協議では、協議が難航することがあります。
ここでさらに養子が加わると、相続人の数が増え意見がまとまりづらくなる点が挙げられます。

養子も実子も、相続人としては同じ立場になります。
お互いの権利を主張しあうことで、争いに発展してしまうことも考えられます。

また、養子縁組により相続人が増えたことによって、他の相続人の取り分が減ります。
本来、もらえる分であった取り分が減ったことにより元々の相続人からの不満が出る可能性があります。

相続人が複数いる場合は、慎重に養子縁組を行うことをお勧めします。
そして、養子縁組を行い、相続発生後に少しでも揉めることが危惧されるのであれば、事前に遺言書等を遺しておいた方が、残された方々は揉めずに済むかもしれません。

4-2-2.孫養子は2割加算

被相続人の孫を養子にした場合には、実子としての扱いにはなりますが、相続税の計算時には孫は税金が2割加算になりますので、注意が必要です。

被相続人の一親等の血族及び、配偶者以外の者が、相続または遺贈によって財産を取得した場合、その人の相続税が2割加算になります。
民法上、養子は実子と同じく一親等として扱われますので通常は2割加算の対象とはなりませんが、例外として「孫養子」は2割加算の対象となるのです。

親族間で養子縁組を行う場合、孫を養子にする方もいらっしゃると思います。
この点を念頭に置いた上で、養子縁組を行ってください。

※子(養子とした孫の親)が既に他界している場合には、2割加算の対象にはなりません。

5.養子縁組をする上での注意点

5-1.証人が必要な場合もある

成人を養子にするには、婚姻届と同じような書類に記載するため、2名の証人が必要になります。

5-2.養子縁組を行う際の趣旨

孫以外の未成年を養子にするには家庭裁判所に許可をもらう必要があります。
ですが、その趣旨を「相続対策のため」としても、認められませんので注意が必要です。

5-3.養子縁組するのであれば、他の相続人の了承を得ること

普通養子縁組は、養親になる方と養子になる方、当人同士の同意があれば基本的には成立します。
したがって、養親に実子がいた場合でも、実子の知らないところで養子縁組を行うことも可能になるのです。

いざ相続が発生し、いきなり養子の存在が発覚して、さらに実子と養子の相続財産の取り分が一緒ということが分かったら、実子の方は少なからず困惑するでしょう。
そのような相続発生後のトラブルを未然に防ぐためにも、養親になろうとお考えの方は、ご自身の相続発生時の利害関係者には養子縁組を行う旨をきちんと知らせ、できれば了承を得た上で行った方が、後々の紛争回避になります。

5-4.養親に対する扶養義務

普通養子は、実親と養親の両親からの相続財産を受け取る権利がある反面、実親と養親どちらの親に対しても扶養義務が生じます。
財産をもらう時のことだけを考えるのではなく、親が働けなくなり収入が無くなった場合や、介護が必要になった場合には、面倒を見る義務が生じます。
財産を受け取る権利がある代わりに、扶養義務も果たさなければならないということをお含み置きください。

5-5.縁組の解消は簡単にはできない

養子縁組を行った後に、養親と養子の関係が悪くなり、養子縁組を解消したいということになった場合、原則としてお互いの合意がないと解消はできません。
特に、実の親子関係を消滅させる特別養子縁組の解消はさらに難しく、家庭裁判所の審判が必要になります。

一方が解消を求めたとしても、合意されずにトラブルになった…という事例もありますので、縁組を行う際には、リスク等を踏まえた上で検討をしてから行ってください。

6.まとめ

今回は、相続と養子についての関係、養子縁組の解説、相続対策で養子縁組を行うことのメリットとデメリット、養子縁組を行う際の注意点について解説させていただきました。
また、後半部分では、養子縁組を行った場合にどのようなリスクがあるのかに焦点を当ててご説明させていただいています。

養子と相続は、冒頭でも述べたように複雑な関係をはらんでいる制度です。
単純に相続税の節税をしたいという目的だけで安易に養子縁組を行うのではなく、民法と相続税法に精通している専門家に相談し、様々なシチュエーションを考えた上で、ご検討いただけますと幸いです。

著者:相続ハウス 栗田 千晶(相続診断士)

「知らなかった」で損をしないために【お金の知りたい】の無料相続相談

相続はとても複雑なもので、お一人ずつ状況が違います。
正しい知識を知らないことで損をしたり、親族でトラブルに発展することも少なくありません。

そこで「お金の知りたい!」がオススメする無料相続相談をぜひご活用ください。
経験豊富な相続診断士がしっかりとお話を伺い、スムーズな相続のお手伝いをいたします。

詳細はこちら

相続無料相談