寄与分があると相続分が変わる/計算方法と事例

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③ところが、このままでは三男が支払った分だけ少ないことになりますので、三男に、その寄与分(3,000万円)を加算します。
→三男の取り分は4,000万円+3,000万円=7,000万円

これで、相続分は以下のようになります。

長男→4,000万円
次男→4,000万円
三男→7,000万円

ここまでできたら、最後に念のためきちんと答えあわせをしましょう。

上記の場合、きちんと「現時点の相続財産」(=1億5000万円)になっていますね。
→4,000万円(長男)+4,000万円(次男)+7,000万円(三男)=1億5000万円

金額換算できない場合

寄与分があることが認められたとして、それが献身的な介護や事業貢献だった場合、それは正確な数字で金額を表すことはできませんよね。

その場合は、どのようにして寄与分の金額を決めるのでしょうか。

このような場合、寄与を行った期間や内容、被相続人と相続人の関係性、それらのこと全てを総合的に考えて、いくらが適当なのか相続人同士で話し合って決めていきます。

もし相続人の間で話し合いがつかなければ、家庭裁判所に調停あるいは審判の申立てをすることになるのです。

5. 主張する際に用意しておくとよいもの

では実際に寄与分があったことを証明するためには、何を用意すれば認められやすいのでしょうか。

①被相続人の介護度がわかるもの(診断書、カルテ、介護認定、介護ヘルパーの利用明細、連絡ノートなど)
②介護のために仕事を休んだ場合などは日付、その欠勤による減収分などの記録
③介護や事業貢献した期間、一日のそれに当てた時間、内容が分かるもの(日記など)
④財産を贈与したことがわかる領収証や通帳

6. 過去の判例

6-1.寄与分が認められた判例

父の家業を繁栄させた場合(前橋家高崎支審 昭和61年7月14日)

Aさんは、亡くなった父Bさんの家業である養豚業に長年従事し、主要な遺産である土地建物維持・形成に著しい寄与をしたとして、1,000万円の寄与分が認められました。

親の介護が著しく大変だった場合(大阪家審 平成19年2月8日)

Aさんは、認知症である父のBさんを熱心に介護していましたが、Bさんの認知症は常時の見回りが必要なほど重度のものでした。

子による親の介護になりますが、これは「当然」の枠を超えているとして、見回りが必要となった期間について1日当たりの寄与を8,000円程度と評価し、寄与分を876万円と定めました。

6-2.寄与分が認められなかった判例

妻が夫を支えたことで法定相続分以上を主張した場合(高松高決 昭和48年11月7日)

Aさんは、23歳の時に船具業を営む夫のBさんと結婚し、実子がいなかったのでXさんとYさんの2人と養子縁組をしました。

その後Bさんが亡くなり、Aさんは法定相続分(2分の1)を相続できることになりましたが、「Bさんの船具業を大きくさせ、事業を成功させた」として、さらに寄与分を主張しました。

XさんとYさんが抗告した結果、この寄与は夫婦間の協力義務にもとづく一般的な寄与の程度を超えるものではないとされるため、法定相続分以上の寄与分は認められませんでした。

父の家業を少しだけ手伝っていた場合(前橋家高崎支審 昭和61年7月14日)

Aさんは父が営む農業を手伝い、普通の農家の子以上に協力してきました。

しかし、それは主に小学生から高校生の学業の合間の手伝いであったため、特別な寄与として考慮することはできないとされ、寄与分は認められませんでした。

まとめ

このように、寄与分という制度を設けることによって、相続人同士で不平等にならないようにされているのがわかります。

しかし注意しなくてはいけないのが、こちらから自分の寄与分を指摘すれば、あちらにも寄与分があったと相手方から指摘されてしまう可能性があるということです。

このことからも、もし調停などで寄与分を主張する場合は、きちんと証拠を揃えるなどして、かなり慎重に行わなくてはいけません。

まずは自分で寄与分の計算をしてみてから、相続でもらえる金額と、寄与分を主張するにあたっての費用を比べてみてから動くのがよいでしょう。

そして自分だけで行わず、専門家に相談してから行うことをおすすめします。

もし相続でもめて、何十年も仲が良かった人と急に不仲になってしまったらとても悲しいですよね。

そうならないためにも、財産を遺す側も受け取る側も、将来を見据えた贈与を行うことが必要ですね。

 

著者:相続ハウス 彼末 彩子(相続診断士)
監修:銀座中央総合法律事務所 清水 保晴(弁護士)

参考文献:「論点体系 判例民法 10 相続」 第一法規株式会社
:「要約 相続判例109」 学陽書房

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