上の項で述べた通り、遺産分割協議は相続人全員の合意がなければ成立せず、協議に参加しない相続人がいた場合はその協議は無効となります。
必ず漏れのないよう相続人を調査し、通知するようにしましょう。
相続人全員(包括受遺者がいる場合にはその方も)で遺産分割協議を行い、全員の合意が成立したら、その内容を遺産分割協議書に落とし込んでいきます。
協議の詳しい進め方については、別の記事にて解説していますのでご参照下さい。
2-2.遺産分割協議書作成のポイント
遺産分割協議書に記載する基本的な項目は以下の通りです。
(1)被相続人の表示
氏名・本籍地・最後の住所地・死亡年月日等を記載します。
(2)遺産分割協議事項
各相続人がどの財産を取得したかを記載します。財産の記載は以下の項目を正確に記載します。
不動産…土地の所在・地番・地目・地籍、家屋の所在、家屋番号、種類、構造、床面積等
手元現金…金額
預金…金融機関名・支店名・種類・口座番号・相続開始時の残高等
株式・証券…銘柄・持株数
債務…債権者の名称、相続開始時の残高、負担者、分配方法(※1)
※1…債務については、相続人間で誰がどのように負担するか決めておく必要があります。
ただし、遺産分割協議書に債務の分配を記載していたとしても、法的な効力はないため債権者には通用しません。債権者から法定相続分に応じた債務の返済を請求された時には、支払いの義務が生じますのでご注意下さい。
(3)補記事項
上記の分割協議事項以外に取り決めた事項を記載します。一般的には以下の2点について記載することが多いです。
・代償分割を行う場合は、その金額(もしくは代償物)、支払方法、期限について記載します。
・遺産分割協議後に判明した財産の分割方法(誰が取得するか)についても記載します。
(4)遺産分割協議の成立年月日
遺産分割協議書が成立した年月日を記載します。相続人がそれぞれ遠隔地に住んでいるような場合は、遺産分割協議書を回付し、最後に署名押印をした相続人が日付を記入することが多いです。
(5)相続人全員の署名・捺印
相続人全員が住所・氏名を自署し、実印を押印します。相続人全員の印鑑登録証明書も必要となります。住所の記載は、印鑑証明書の記載通りに記入します。
詳細な記載方法や特殊なケースについては、別の記事でも解説していますのでご参照下さい。
2-3.必要書類
遺産分割協議書の作成にあたり取得すべき書類は以下の通りです。
また、これらの書類は相続税申告や相続登記、財産の名義変更等で遺産分割協議書を提出する際に添付することもあります。
その他、申請先により別途提出書類の指定がある場合もありますので、詳細は各申請先に問い合わせると良いでしょう。
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 相続人全員の印鑑証明書
- 登記簿謄本、預金通帳など財産を証明するもの
3.まとめ
遺産分割協議書の概要と必要性、作成の流れとポイントについてご説明致しました。
遺産分割協議書の作成は義務ではなく、また決まった書式もないため(※2)、そもそもなぜ遺産分割協議書が必要なのか、どうやって作成すればいいのかわからないという方も多いことと思われます。
ですが、相続手続きを行うにあたり、遺産分割協議書はとても重要な役割を持ちます。
自分たちの代で遺産分割協議書を作成しなかったがために、後の代の相続手続きが非常に煩雑になってしまった…という事例も多く見受けられます。
後の代に苦労をさせないためにも、相続が発生したら、しっかりと遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成されることをお勧めいたします。
※2…不動産登記の際に提出する遺産分割協議書には、書き方に一定のルールがあります。
著者:相続ハウス 山下雅代(相続診断士)
監修:司法書士法人 おおさか法務事務所