ですが、この制度を利用していたとしても、相続放棄をすることはできます。
相続時精算課税制度という制度を利用したからといって、民法上の相続放棄ができなくなる訳ではなく、相続人が被相続人の生前に贈与(相続時精算課税制度を利用した贈与も同様に)を受けていたとしても、相続を承認したものとはみなされません。
少しややこしいですが、税法と民法とは切り離して考えるため、相続放棄は可能ということになります。
5-3-2.相続時精算課税制度利用時に贈与税を支払っていた場合
被相続人の生前、相続時精算課税制度を利用して贈与税を納めたとしても、被相続人の相続発生時に、贈与を受けた人にかかる相続税額が、贈与税額以下だった場合には、還付を受けることができます。
例えば、相続人が5名いるご家族で、その一人が生前相続時精算課税制度を利用して5,000万円の生前贈与を受けていたとします。
相続時精算課税制度の2,500万円の特別控除枠を超えた部分の20%である贈与税額500万円を納めました。
ですが、事情があり財産を受取った相続人は相続放棄をすることになりました。
相続発生時の財産が1億円あったとすると、贈与を受けた相続人が生前受取っていた財産の割合は、33%ですので、相続税額は367万円になります。
これは、贈与税として以前納めた額を超えていますので、その差額133万円は還付される事になります。
相続放棄をしても、生前、相続時精算課税を利用して支払っていた贈与税の還付は受けられます。
6.まとめ
今回は、相続時精算課税制度の制度や手続きの手順、必要書類、相続発生時の取り扱われ方や相続放棄をした場合の扱いについて解説いたしました。
複雑な制度にはなりますが、状況や条件が当てはまった方には、有効な制度になるでしょう。
今回のご解説で、少しでも相続時精算課税制度のご理解を深めていただけると幸いです。
また、以下の記事でも相続時精算課税制度のメリットやデメリットについて解説しておりますので、宜しければご参考にしていただければと思います。
▼相続時精算課税制度について詳しく知りたい方はこちら
「住宅購入に使える!相続時精算課税制度のメリットとは?」
「その贈与は少し待って!相続時精算課税制度のデメリット」
著者:相続ハウス 栗田 千晶(相続診断士)
監修:税理士法人エスネットワークス