しかし、実際は、裁判所や弁護士等の助けを借りることも多く、手続きを踏んで進められていきます。
また、減殺の順序も下記のように決まっています。
贈与より遺贈が先になり、遺贈で戻されても遺留分に満たない場合はさらに贈与で減殺されます。
複数の贈与があった場合は、新しいものから順番に減殺されます。
【請求することのできる財産の順位】
1 | 遺 贈 | 最初に遺贈から減殺し不足があれば贈与減殺にすすむ |
---|---|---|
2 | 贈 与 | 死因贈与と生前贈与があるが、死因贈与は通常の生前贈与よりも遺贈に近い贈与であるとして、遺贈に次いで、先に減殺対象となる |
3-1.協議交渉
遺留分の請求では、まず、当事者同士で話し合いをします。
弁護士に依頼せずに協議交渉を行います。
さらに、弁護士が依頼を受けてから、弁護士同士で協議交渉をすることもあります。
お互い顔を合わせたくない、裁判にもしたくない、早く解決したい場合にこの方法が使われます。
ただし、協議交渉がうまくいかないときは、調停や次の裁判に進みます。
3-2.調停手続
調停とは、裁判所を利用した話し合いの手続きです。
相手と直接やりとりをせずに、お互いに裁判所の調停委員という人に話をして、調整や取り次ぎをしてもらいます。
先の協議交渉と比べると、法律の専門家が間に入り、話し合いを調整することで、より解決の道が開けます。
一方が協議交渉を拒否しているような場合でも、話し合いの場を作れることがありますし、感情的になりやすい当事者間での話し合いとは異なり、建設的な議論に持って行きやすくなります。
3-3. 裁判について
相手方との話し合いによって、問題が解決されるのであれば、いくらかのストレスで事態は丸く収まることになります。
しかし、相手方が交渉に応じないということになると、家庭裁判所の審判、裁判によって何らかの決着を付けることになります。
裁判となると大げさなイメージがありますが、裁判は、争いごとに国がその権力を持って結論を出すという制度です。
協議や交渉で解決がなされない問題は、裁判が最終手段となります。
3-4.遺留分減殺請求の期限
相続開始および減殺すべき贈与、または遺贈があったことを知った時から1年以内に、遺留分を侵害している相手方に請求しなければ、その権利はなくなります。
また、贈与等によって遺留分が侵害されていることを知らなくとも、遺留分減殺請求は、相続開始の時から10年経過すると消滅してしまうので注意が必要です。
4.減殺請求により財産を取得したら
遺留分の減殺請求により新たに相続税の納税義務者となった場合も、相続税の申告期限は、原則どおり、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。
5.遺留分減殺請求されたら
遺留分は相続人に保障された権利ですから、遺留分を侵害している人は、相続人に遺留分を請求された場合、それが正当であれば、原則として、その分を相続人に渡す必要があります。拒むことはできません。
また、遺留分減殺請求された人は、遺贈された相続財産をそのまま返還することもできますし、代わりに現金で支払うことも可能です。
6.まとめ
もしあなたが、受け取れるはずと思っていた相続財産を、万が一受取れなくなったとしたら、「遺留分減殺請求」という権利を主張することで、その財産を取り戻せるかもしれません。
まずは、遺留分が侵害されていないかどうかを確認しましょう。
万が一、ご自分の遺留分が侵害されていたとしたら、遺留分減殺請求を考えてみてください。
仮に遺言書の内容が、強硬に遺留分を侵害する内容であったとしても、この権利を主張することによって、遺留分に相当する相続財産を得ることができます。
今回は、遺された相続人の財産を、一定額保証する「遺留分」制度、さらに、その制度を守ろうとする「遺留分減殺請求」についてお伝えしてきました。
知っているということは、いざという時に強い味方となり、遺された相続人の生活を支えていくのではないでしょうか。
著者:相続ハウス 奈良澤 幸子(相続診断士)
監修:弁護士法人法律事務所オーセンス 森田 雅也(弁護士)