まず、相続が発生したところで、「秘密証書遺言書」を保管している者あるいは発見者は、遅滞なくこれを家庭裁判所に提出して、その検認を受けることになります。
そして、その遺言の内容が法で定められた方式にのっとっているかどうかの確認の手続きを行います。
検認の手続きは下記の通りです。
1.申立 | まず、相続開始地(遺言者の最後の住所地)の家庭裁判所に申し立てます。
<申立て必要書類> |
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2.検認期日の通知 | 家庭裁判所は、遺言書検認の期日を相続人全員に通知します。 通知を受けた相続人が検認期日に立ち会うか否かは相続人の任意です。 |
3.検認の実施 | 検認期日に相続人の立ち会いのもとに検認が行われ、その結果を検認調書に記載されます。 |
4.検認済証明及び遺言書の返還 | 遺言書は検認後、申請により遺言書原本に、検認済証明書を契印して申立人に返還されます。 相続人または受遺者は検認済の遺言書を使って相続登記、預貯金等の名義書換を行うことになります。 |
5.検認済の通知 | 検認に立ち会わなかった申立人、相続人、受遺者等に「検認済通知書」として、その旨が通知されます。 |
これらの手続きは、相続人の数などにもよりますが、おおむね1ヶ月前後の時間がかかります。
4.保管と費用
作成した秘密証書遺言書は、遺言者自身で保管することになります。
従って、紛失のリスクがあります。
費用については、公証役場での手続き費用が11,000円かかります。
その他に、戸籍関係書類や登記事項証明書等、役所や法務局に支払う費用などがあります。
5.秘密証書遺言の留意点
以下、秘密証書遺言書のメリット・デメリットをまとめました。
5-1.メリット
・遺言内容を秘密にすることができます。
・手書きで作成する必要がなく、代筆・ワープロでも可能です。
・誰にも知られることなく作成しますので、遺言書の偽造など防げます。
・証人と公証人役場と関わることで遺言の存在のみ明確にすることができます。
5-2.デメリット
・2人以上の証人を選任し公証役場に出向かなければなりません。
・公証人手数料や場合によっては交通費などの費用がかかります。
・遺言者が管理をする為、紛失してしまう恐れがあります。
・専門家のチェックなしで本人が作成した場合、遺言内容に法的効力不備の恐れがあります。
・内容が分かりにくいと、かえって揉める可能性があります。
5-3.その他注意
署名以外は自筆でなくてもOK!というのが、秘密証書遺言の大きな特徴のひとつですが、法的効力を持つ遺言書にする為には、一定のルールに従わなければなりません。
前述のデメリットにも見られるように、秘密証書遺言書はその手続きの煩雑性と遺言としての効力に確実性が欠けることが見られます。
効力のある遺言書を遺すために、秘密でなくなりますが、弁護士等専門家のチェックを受けること、また、特に注意が必要なのは、印鑑を使う箇所では同じ印鑑で行うということです。
6.まとめ
秘密証書遺言書は、現状、年間100件余りが作成されているようです。
被相続人となられる遺言者にしてみれば、ご自分がいなくなってから知らせたいといった出来事や、一部の残された方に託したい事などあるため、他の人には何が書いてあるのかを知られたくないということもあると思います。
また、遺言者が若く、定期的に見直す必要性が高い場合にコストを抑える方法として用いられることも多いようです。
自筆証書と違い、公証人や証人が関与する秘密証書遺言は、遺された相続人に対しても、一定程度の権威をもつことを期待される点も有用性に上げられると思います。
遺言者のさまざまな思いの中で、この秘密証書遺言が、ひとつの方法として役立つのかもしれません。
著者:相続ハウス 奈良澤幸子(相続診断士)
監修:司法書士法人おおさか法務事務所