これら4通りの相続人の中でも、相続人によって条件が変わってきます。
細かい条件の違いはありますが、基本的に、小規模宅地等の特例適用のポイントになるのは
・相続人が誰になるのか
・対象となる宅地に、被相続人と同居をしていたか
・その宅地をこれからも保有するか
が、ポイントになってきます。
まず、①の配偶者については、同居をしていようがしていまいが、相続の発生後にその宅地を保持していなかったとしても、無条件で特例の対象になります。
法律上では、夫婦は一心同体であるという観念が強く、配偶者が保護されるようになってると考えられます。
②の生前から同居をしている親族、③の生計を共にしている親族については、相続発生前、そして相続税の申告期限までにその土地を保有し続けている事が要件となります。
例えば、被相続人名義の土地に、被相続人と生前から同居をしており、相続発生後もそのままその家に住み続けるということであれば、特例が適用されます。
また、「生計を共にしている」基準としては、被相続人とその親族がお互いの家を頻繁に行き来していたり、生活費や学費・医療費等を互いに出し合っていたり、社会的・経済的に一体として暮らしていると判断できるような場合、「生計を共にしている親族」としてみなされます。
④の理由がありやむなく同居できない親族については、被相続人と同居をしていなかった場合でも、特例を受けられる制度が設けられています。(通称、家なき子特例)
家なき子とは読んで字の如く、持ち家を持たずに借家に住んでいる人のことです。
家なき子特例を受けるには、
・被相続人の配偶者および同居している相続人がいないこと
・被相続人の自宅の土地を相続する相続人が、相続開始3年以上、借家住まいであること
上記2点を満たしていることが条件になります。
従って、例えば相続人となる方が同居しておらず、さらに持ち家を持っていた場合には適用の対象にはなりません。
4-2.貸付事業用宅地
この特例を受けることのできる相続人は、相続後もその宅地の貸付事業を引き継ぎ、保有し続けている親族です。
被相続人が貸付事業の用に供していた宅地が対象となります。
そしてその貸付用の宅地を相続税の申告期限まで保有していることが要件となってきます。
5.申告時の注意点
小規模宅地等の特例が適用されることにより、本来発生していた相続税が0円になる家庭は多いでしょう。
ですがご注意いただきたいのは、あくまでも相続税の申告を行い「我が家は小規模宅地等の特例を受けて相続税が0円になりました」という意思表示は必須であるというです。
相続税の試算をしてみて、相続税が発生しないことが分かった。よしこれで安心だ!で終わらせてしまうのではなく、その旨を税務署に申告することによって特例適用が認められるわけです。
申告をせずにそのまま申告期限を迎えてしまい、後々、税務署から指摘を受けた場合には、小規模宅地等の特例を適用出来ずに相続財産を評価されることもありますので、十分にご注意ください。
相続税の申告が不要な方とは、小規模宅地等の特例を適用しなかったとしても相続税申告の対象にならなかった方のみということになります。
6.まとめ
今回は、小規模宅地等の特例の概要や要件にスポットを当てて解説させていただきました。
相続税の節税効果を狙うには、外すことのできない制度ですが、専門家でも誤って認識をしていることがあるくらい、緻密で解釈のミスが起こりやすい特例です。
ただし、概要をつかんでおけば、いざ相続を考える場面に直面した際、自分は対象者になるのか?また、相続させる土地、相続するであろう土地は特例の対象になるのか?等、そういったおおよその判断はつくでしょう。
相続の対象となる宅地は、住んでいた宅地なのか?事業に使っていた宅地なのか?賃貸していた宅地なのか?
まずは宅地の状況を整理し、相続を受ける方の生活状況が要件に該当するのか?を考えるところから始めましょう。
著者:相続ハウス 栗田 千晶(相続診断士)
監修:税理士法人エスネットワークス