【事例2】
二世住宅で同居している子どもが相続したが、共有部分のない完全分離二世帯住宅
かつて完全分離型は被相続人の専有部分のみが適用となっていましたが、法改正によって敷地全体が対象になりました。
【事例3】
被相続人の店の土地を一緒に事業を行っていた跡継ぎ(生計同一)が相続
相続税の申告期限までその宅地等で事業を営み、かつ土地を保有していれば適用が受けられます。
【事例4】
老人ホームへ入居してしまった場合「元自宅」は「自宅」扱いになるのか
自宅を賃貸に出すなどしなければ、特例を適用できる可能性があります。
老人ホームに入居するときの状況によっても、適用の可否が異なりますので、注意してください。
事例はほんの一例で、実際に小規模宅地の特例が適用できるかどうかは個々の事情により異なります。
適用を受ける際は専門家の判断を仰ぐようにしてください。
3.小規模宅地等の特例による減額金額の計算方法
ここで注意したいのが、相続税が直接減額されるわけではないことです。
例えば、もともとの評価額が5,000万円の土地を子どもが1人で相続するとします。(他の相続人はなしとする)
面積が330平方メートル以下であれば、80%減額されます。
【例】
評価額:5,000万円×特例:80%=減額金額:4,000万円
評価額:5,000万円-減額金額:4,000万円=課税価格:1,000万円
この1,000万円に相続税が課税されることになります。
相続税は超過累進課税といい、財産が多いほど税率が上がりますし、一定の非課税枠があります。
そのため評価額を抑えることができれば大きな減税に繋がります。
4. 小規模宅地等の特例の適用を受けるためには
小規模宅地等の特例は遺産分割が完了していることが必要で、相続税の申告期限までに行うのが原則です。
相続税の申告時、小規模宅地の特例にかかる計算の明細書や、遺産分割協議書の写しなども添付して行います。
ただし、申告期限までに分割が間に合わない場合には分割の見込書を添付し、更に申告期限後3年以内ならば適用を受けることができます。
▼参考:国税庁 相続税の申告の際に必要な添付書類
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku/shikata-sozoku2014/pdf/05.pdf
5.小規模宅地等の特例の注意点
5-1.相続トラブルに注意
盲点なのが、小規模宅地の特例を適用したが故の、兄弟間トラブルです。
子どもが複数いる場合、同居者と非同居者が混在することもあるでしょう。
この場合、同居の子どもが土地を取得すれば特例が適用できる可能性が高いです。
しかし相続税の圧縮に気を取られて当たり前のように同居の子どもの名義にしてしまうと、非同居の兄弟から不満の声が上がることも考えられます。
相続税が減額できても、兄弟間の仲が悪くなっては意味がありません。
たとえ納税額が大きくなっても、相続人達が納得できる分割を目指しましょう。
5-2.最新情報を常にチェックしよう
二世帯住宅の適用が緩くなったことは事例の項目で記述したとおりです。
また、老人ホーム要件も一時期に比べて緩和されました。
他にも、限度面積や減額割合など細かい改正が多いのもこの特例の特徴です。
要件や内容を一度知って満足するのではなく、常に新しい情報を仕入れられるようアンテナを立てておく必要があります。
6.まとめ
相続税が減額されるという特例は大きな魅力ですが、細かい要件が多いので必ずしも適用できるとは限りません。
また、制度を利用したいがために相続人間の関係が壊れては本末転倒です。
相続人の間で話し合いながら、うまく適用したいものですね。
その意味では、話し合いを円滑にする材料としても活用できるのではないでしょうか?