単純承認以外の選択肢が、以下になります。
相続放棄 | 被相続人が遺した財産を、プラス・マイナス問わず一切相続しません。 相続開始を知ったときから3ヶ月以内に手続きが必要ですが、限定承認とは異なり、単独での申立ても可能です。 |
限定承認 | プラスの財産とマイナスの財産のどちらかが多いか分からない場合に利用される制度です。 被相続人が遺した財産のうち、マイナス財産よりもプラス財産が上回る場合には、その上回った範囲内で相続ができます。申し立てをしておいて、マイナスの財産が多い場合は、不足分を支払う必要はないというメリットがありますが、相続開始をしったときから、3ヶ月以内に相続人全員で手続きを行う必要があり、手続きも煩雑です。そのためよほど多額の財産が残る見込がなければ、相続放棄を選択する相続人が多いようです。 |
5.相続放棄と代襲相続について
代襲相続とは、本来、相続人となるべき相続者が、相続開始前に死亡していたり、相続欠格・相続排除により相続権を失った者に代わって、その子供たちが相続をする制度のことです。
相続放棄をした場合は、はじめから相続人でなかったこととして見なされるため、代襲相続は起こりません。
例えば、母親が亡くなりその配偶者(父親)と子供が法定相続人だった場合、もし子供がそれ以前に亡くなっていた場合は、その子供のさらに子供(孫)が代襲相続をしますが、
子供が相続放棄した場合は、その子供(孫)は、法定相続人になれないのです。
そうなると、この場合は、亡くなった母親に父母がいれば配偶者(父)と父母(祖父母)が法定相続人となります。
父母(祖父母)も相続放棄をした場合は、配偶者(父)と兄弟姉妹が法定相続人となります。
6.相続放棄を取り消したい
6-1.相続放棄を取り消すことはできるのか
家庭裁判所に申述をし、受理された放棄をやっぱり後から取り消したい…と思った際に、相続放棄の取り消しを申請することはできるのでしょうか。
一度受理された相続放棄を取り消すことはできません。
6-2.なぜできないのか
相続放棄の申述を行うと、家庭裁判所はその申し立てについて合理性があるかなどについて審議をします。そのように審議を経て受理された申し立てを、「やっぱり相続したい」と言ってそれが簡単に通ってしまうのでは、わざわざ家庭裁判所に申し立てをして、審議、受理をされる意味がなくなってしまうからです。
6-3.取消等が認められるケース
脅迫や詐欺、重大な勘違いによって相続放棄をしてしまった場合には認められるケースもあるようです。
その場合にも、家庭裁判所に取り消しの申し立てをすることになります。
但し、このケースで取消が認められる可能性はかなり低いようです。
また、放棄自体を最初からなかったことにする「撤回」は絶対にできませんので、ご注意ください。
7.相続放棄を行った後にすること
相続放棄をする理由として、一番多いのがマイナスの財産を放棄したいという理由の人が多いです。そういった人々が、身に覚えのない借金を回避するために相続放棄をする訳です。
しかし、相続放棄をして借金返済をする義務がなくなり一安心…と言いたいところですが、一つしなければならないことがあります。
裁判所というのは、相続放棄が終わったことを、金融機関に通知することまではしません。従って、そのままにしておくと金融機関は相続放棄が完了したことをずっと知らないままでいるのです。
そうなると、相続放棄がされているにも関わらず、金融機関は請求書を送付してきます。そのような事態を未然に防ぐために、相続放棄が無事完了したら、相続放棄申述受理通知書のコピーを金融機関に送付して、相続放棄をして受理されたことを知らせましょう。
まとめ
今回は、相続放棄の手続きをする際の基本的な知識、手順や必要書類、相続放棄と代襲相続の関係や取り消しについての情報をご紹介させて頂きました。
ご存知のとおり、相続放棄には期限が設けられており、相続発生後から3ヶ月以内に手続きを終えなければなりません。
財産の洗い出しや、必要な書類を集めなければならず、これは結構タイトなスケジュールになります。ですが、一度認められた相続放棄は原則として取り消すことができませんので、期限が決められている中でも慎重な判断が必要になってくると考えられます。
相続放棄は、相続関係の法律の中では、最も強力なものであるとも言われています。
判断に迷う場面もあるかもしれませんが、よく考えて実行に移されることをお勧めします。
著者:相続ハウス(相続診断士) 栗田 千晶
監修:銀座中央総合法律事務所 清水 保晴(弁護士)