推定相続人が割り出せたら、戸籍を収集して他に相続人となる方は、本当にいないか?という調査を行います。
被相続人に前妻がおり、その間に子供がいたことが戸籍を取って初めて発覚した。という事例もありました。
他の相続人が見つかった場合には、その後の遺産分割協議に大きな影響が出てくるので、最初の段階で相続人の確定を行っておきましょう。
2-4.遺産を相続するのか放棄するのかを決める
被相続人の遺産が明らかになったら、今度はその遺産を相続するのか?または相続しない(放棄する)のか?を決めます。
純に、すべての遺産を相続しますということであれば「単純承認」という相続方法になります。
遺産には、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も含まれる為、財産調査を行った結果、もしもマイナスの財産の方が多かった場合には、負債を背負ってしまうことになります。
そういった方の為に、遺産を相続せずに放棄するという選択もあります。
これを「相続放棄」といいます。
相続放棄を行うことによって、最初から相続人でなかったことになります。
従ってすべての財産を相続しないことになりますので負債等を背負うこともなくなります。
また、負債があった場合で、プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか分からない場合等は「限定承認」という相続の方法もあります。
これは、プラスの財産がマイナスの財産を上回った場合、上回った分だけ相続をして、マイナスの財産がプラスの財産を上回った場合には、プラスの財産を限度としてマイナスの財産を相続するという方法です。
単純承認、相続放棄、限定承認の中からどの相続方法を選択するのか、決めなくてはなりません。
そして、相続放棄と限定承認には相続発生から3ヶ月以内に手続きを行うという期限も設けられています。
特に、限定承認の場合は、相続人全員で手続きをしなかればなりません。
相続人が1名だった場合には、ご自身の意思のみで決断することもできますが、相続人が複数名の場合には、その他の方の意思を確認する必要もあります。
財産の状況や相続人の状況を踏まえた上で、期限があるということもお含み置きいただいて、どうするのかを考えていきましょう。
▼参考
【これを読めば相続放棄は完璧!相続放棄の総まとめ】
【負債は相続したくない!限定承認の活用とかかる費用】
2-5.財産の分け方を決める(遺産分割協議)
遺産の相続をするということになった場合、今度はその遺産を「誰が」「どのように」相続するのかを話し合います。(=協議)
遺言書が遺されていなかった場合、そして、相続人が複数の場合には、遺産分割協議を行う必要があります。
また、遺言書が遺されていたとしても、具体的な財産の分割について記載がなかった場合には相続人で協議を行わなければなりません。
遺産相続の手続きを進めていく中で、この遺産分割協議がまとまらずに時間がかかってしまい、相続税の申告・納付に間に合わないといったケースもあります。
遺産分割協議の進め方については、下記の記事をご参考にしてみてください。
▼参考
【みんな納得!円満!遺産分割協議の方法と手順を知ろう】
2-6.遺産分割協議書の作成
遺産分割協議がまとまったら、その内容を書面に落とし込みます。
書面で残しておくことによって、後々の相続人間のトラブル予防にもなりますし、不動産の名義変更や銀行口座の名義変更や、相続税の申告・納付の際に必要になってくるので、遺産分割協議を行った場合には作成しておきましょう。
遺産分割協議書には、絶対に守らなければならないという形式はありません。
ですが、誤った書き方をしていた場合に、名義変更を行う際に修正をするように指摘されることもあります。
一般的な形式等をお調べいただくか、協議内容が複雑な場合には専門家に作成を依頼するのも手です。
▼参考
【どうして必要?どうやって作る?遺産分割協議書】
2-7.各手続き(名義変更、相続登記、相続税申告等)
遺産分割協議書の作成が完了したら、次はその協議書を使って手続きに移ります。
名義変更とは、被相続人が保有していた預貯金や有価証券の口座の名義変更です。
また、不動産を所有していた場合にも、名義変更を行う必要があります。
相続が発生したことを原因として不動産の名義変更を行うことを、「相続登記」といいます。
これらの手続きを行う際に、遺言書が遺されていた場合には、必ずその遺言書が必要書類になります。
また、遺言書が遺されていなかった場合には、遺言書の代わりに「2-6.遺産分割協議書」で解説した遺産分割協議書が必要になってきます。
これらの名義変更には、特に期限はありません。
ただし、長年放置しておくと後々になってトラブルの種になりますので、遺産相続手続きを進めていく流れで一緒に済ませてしまうことをおすすめします。
そして、遺産の財産額が相続税の基礎控除額を上回っていた場合には、相続税の申告・納税手続きを行います。
この手続きには期限があります。
相続税の申告・納付は、相続発生から10か月以内に行わなくてはなりません。
従って、「2-2.財産調査」の段階でご自身が相続税の申告対象ということを把握した場合には、その後の「2-3.相続人の確定」~「2-6.遺産分割協議書の作成」までの手続き、そして相続税の申告・納付の全てを10か月以内に終わらせるということを念頭に置き、手続きのスケジュールを組み立てるようにしましょう。
では、遺産相続手続きはどのように進めていけばいいのでしょうか?
それぞれ、手続きを行う場所やご用意いただく書類も違います。
次の章で、主な手続きについてご説明していきます。
3.遺産相続手続き
3-1.銀行・証券口座解約
被相続人が、銀行口座や証券口座を開設し、そこに預貯金や有価証券を保有していた場合には、解約をするか名義変更をする必要があります。
銀行預金の場合には、基本的に被相続人の相続発生を銀行が何らかの形で知った時点で、口座は凍結されてしまいます。
これは相続発生後に相続人や他の誰かが、勝手に被相続人の財産を引き出してしまうのを防ぐ為です。
ですが、口座は一度凍結されてしまうと、相続人が手続きをしない限りその口座に預けているお金を動かすことはできません。